濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER

「那須川天心や武尊とは違うんですよ、僕は」青木真也が因縁の秋山成勲に大逆転KO負け…帰国して語った本音とこれから「50歳になっても」 

text by

橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

PROFILE

photograph byONE Championship

posted2022/04/15 17:01

「那須川天心や武尊とは違うんですよ、僕は」青木真也が因縁の秋山成勲に大逆転KO負け…帰国して語った本音とこれから「50歳になっても」<Number Web> photograph by ONE Championship

秋山成勲との“因縁の一戦”を終えた青木真也が、試合を振り返って現在の心境を明かした

 1ラウンド、打撃を得意とする秋山に青木が組みつく。スタンド状態でバックを奪うと裸絞め、あるいはフェイスロックを狙って首に腕を回していく。前回の試合では、この形で一本勝ちを収めた。つまり得意な形だ。

 落ちかけたという秋山だが、1ラウンドをしのぎ切るとチャンスが待っていた。2ラウンド開始時、青木の目が「引いていた」と秋山。タックルで片足を掴まれた状態でもアッパーを連打するなど、一気に勝負に出た。攻め疲れなのか動きが落ちた青木は被弾。金網を背負った状態でラッシュを食らい、試合を止められた。劇的で、完全な決着だった。“セクシーヤマ”のキャッチフレーズを持つ秋山は、勝利者インタビューで言った。

「次はもっとセクシーな試合をします」

 そんな言葉が自然に出てくる、いい意味での“軽さ”が秋山にはあった。因縁は因縁、試合は試合だ。

シンガポールから帰国した青木が筆者に語ったこと

 秋山は勝つことに100%没頭できた。一方、青木はどうだったのだろう。シンガポールから帰国した青木に話を聞いた。

「攻防の一つひとつを振り返ってどうこうという試合じゃなかった。結局、自分が無力でしたよ。1ラウンドに極めきれなくて2ラウンドに……気持ちの疲れですよ、ここまでのね。精神的消耗。全部、僕が作ってきたから」

 2008年の因縁を持ち出されても、ピンとくるファンはそう多くなかっただろう。だが青木は昨年、正式決定しなかった試合のことまで言及して秋山と対立した。だからこそ秋山の怒り、苛立ちも表に出た。

「薄っぺらい」、「本当のケンカを知らない」、「一周まわっても嫌い」。秋山はオフィシャルインタビューでそう語っている。もちろん青木の舌鋒も鋭かった。曰く「忌み嫌ってる」、「自分をベビーフェイスと思ってる。こんな認知の歪みある?」。さらに秋山をこう評した。

「僕はいいことでも悪いことでも本当のことを言ってる。思ったことしか言わない。(秋山は)きれいごとしか言わないでしょ。見え方だけ気にしてる。利口じゃない、小利口なんですよ。美しさがないしプライドがない」

 だが秋山が桜庭和志戦で体にボディクリームを塗り込んでいた、いわゆる“ヌルヌル事件”に関しては「どうでもいい」。秋山を嫌う格闘技ファンからの応援、つまり「秋山をやっつけてほしい」というような声には「俺の客じゃない」と言っていた。青木は味方を増やしたいわけではなく、青木真也vs.秋山成勲のストーリー、文脈を見せたかった。そのために、何も取り繕わなかった。

【次ページ】 「那須川天心や武尊とは違うんですよ、僕は」

BACK 1 2 3 4 NEXT
#青木真也
#秋山成勲

格闘技の前後の記事

ページトップ