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「泣いてる場合じゃない」新女王・坂本花織と中野コーチが守った“フィギュアの品格” 「20年前のスケート」発言のタラソワへ伝えたいこと

posted2022/04/14 11:03

 
「泣いてる場合じゃない」新女王・坂本花織と中野コーチが守った“フィギュアの品格” 「20年前のスケート」発言のタラソワへ伝えたいこと<Number Web> photograph by Asami Enomoto

世界選手権で優勝を果たし、笑顔を見せた坂本花織

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田村明子

田村明子Akiko Tamura

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Asami Enomoto

「運が良かったです」中野園子コーチは謙虚に、そう口を開いた。

 南仏モンペリエ世界選手権で、坂本花織がSP、フリーとトップを保ち、初優勝。伊藤みどり、佐藤有香、荒川静香、安藤美姫、浅田真央に続く、日本女子として8年ぶり、6人目の世界チャンピオンになった。

 記者たちにその感想を聞かれて、中野コーチはこう繰り返した。

「(坂本は)ずっと運がよかったです。まだまだ実感がありません。良いんでしょうかね、という感じ」

 中野コーチが「運が良かった」と何度も繰り返すのは、もちろん北京オリンピックからの流れも含めたロシア女子をめぐっての一連の騒動のことだろう。

 2月の北京オリンピックではロシア女子が表彰台を独占すると予想されていた中で、圧倒的な優勝候補とされていたカミラ・ワリエワが12月にドーピング検査陽性の判定を受けていたことが明らかになり、大騒ぎとなった。CAS(スポーツ仲裁裁判所)は15歳という年齢を考慮して競技参加続行を許可するも、ワリエワはフリーで大きく崩れ、予想外の4位という結果に終わった。アンナ・シェルバコワが金メダル、アレクサンドラ・トゥルソワが銀メダル。

 こうした騒動の中で坂本は自分のペースを崩さず、SP、フリーと本来の演技を見せて3位に食い込み、日本女子4人目となるオリンピックメダルを手にした。

中野コーチに聞いた「坂本をどう指導してきたか?」

 北京オリンピック終了直後にロシアによるウクライナへの軍事侵略が始まり、ISUはロシアとベラルーシの選手を世界選手権から除外。北京オリンピックの唯一の女子シングルメダリストとして注目を浴びながら挑んだ、モンペリエ世界選手権だった。

「今大会にロシアの選手が出られないので、急に金メダル候補といわれてこの大会にのぞんで、最初はやっぱり調子があまり良くなかったので、頑張りたいという気持ちと、調子があまりにも差がありすぎて、最初はすごく大変だった。けれど、日に日に調子が上がってきたし、結果よりも今シーズンSPもフリーも最後になってしまうので思い切り精いっぱい滑って、満足のいく演技をしようと思いました」。SP後の会見で、坂本はそう気持ちを言葉にした。

 中野コーチは、そんな坂本をどう指導していったのか。

【次ページ】 フリー演技前、幕の裏では泣いていた

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