篠木投手の木更津総合高からがっちりマークしていたというこのスカウトの方は、2年生の今の段階で、学生球界3指に入る右腕だという。

「狙って取りにいって、筋書き通り、きっちり三振を奪ってる。プロのピッチャーが、学生相手に投げてるようなものです。高校時代から相変わらず細いのが、唯一気になるけど、“細マッチョ”っていうやつかもしれないし」

　変化球を操れるのも、大きな強みだという。

「快速球がキュッと動くようなカットボールに、チェンジアップでも腕の振りが真っすぐとそんなに変わらない。それにカーブがあるから、スピードの幅が30キロぐらいでしょ……バッターは待ちにくいですよ。コントロールで崩れるイメージもないし、今、売り出し中の赤星（優志・巨人）をもっと勇ましくした感じですかね。2年生になったばかりですけど、もしドラフトに“飛び級”があったら、今年でも1位でしょうね」

東京六大学リーグ、早大戦で9回1失点完投勝利の法政大2年・篠木健太郎（177cm75kg・右投左打）　©Sankei Shimbun

「篠木健太郎の14奪三振」。アマチュア球界にとっては、間違いなく、新たなエースの登場だ。

　胸まで上げた左ヒザをゆっくり下ろしながら、一度ピョンと跳ね上げるようにして踏み込んでくるボディアクションに、ちょっと力を入れればすぐ150キロ台をマークできる瞬発力。スカウト氏は「巨人・赤星をもっと勇ましくした感じ」と表したが、私にはちょっと違ったイメージがあった。

　ふた回りコンパクトにした江川卓。

　やっぱり、こっちだろう。

　その雄姿を記憶している人も減ってきているし、当時の映像もそうは残っていないかもしれないが、当時と今の両方を知っているプロ野球人の多くが、「いちばんすごい投手」にあげるほどの怪物だった。

　ちょっとコンパクトになったが、同じ法政のクリーム色のユニフォームで「本家」を追いかけていけそうな快腕が、あれから50年近くたって、神宮のマウンドに現れた。