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「女子プロレスを背負って立つ」スターダム王者・朱里が語る“朱いベルト”への思い…岩谷麻優戦で「ドローは絶対に嫌だった」理由とは?
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2022/04/07 11:01
両国2連戦で赤いベルトを守り抜いた朱里。新ユニット「God's Eye」も結成した
相手によって、また“出番”によって闘い方を変える。何がベストかをその時に応じて思考する。それが朱里の理想とするプロレスだ。たとえば第1試合に出ることになったら、コミカルな要素も入れて会場の空気をあたため、ほぐすような展開を見せることもある。
逆にメインのタイトルマッチでは、大会をまとめ上げる重厚な闘いを目指す。その重厚さにしても、ジュリアが相手の場合と岩谷が相手の場合では中身が違ってくる。朱里はチャンピオンとして「相手の強さを引き出し、限界を超えさせ、その上で自分が勝つ」闘いを身上としている。
岩谷戦「ドロー防衛は嫌だった」理由とは?
試合のテーマも違った。ジュリアとはユニットDonna Del Mondo(DDM)の同門対決。しかし対戦前にジュリアとのタッグを解散し、両国に新たなセコンドを連れてきた。元アクトレスガールズの三浦亜美だ。両国初日は朱里のDDM最後の試合だった。ジュリア戦について、朱里はこう振り返っている。
「そういう試合だったので、ジュリアとは闘いながら会話をしているというか、気持ちを伝え合っているような感覚でした」
翌日、岩谷との闘いは気持ちがまったく違った。朱里にとって、この試合はリベンジマッチだったのだ。一昨年の10月、朱里はワールド王座初挑戦で岩谷に敗れている。スターダム入団を果たしたのも岩谷戦の敗北がきっかけだった。他団体の試合と同時進行となるフリーとしての参戦ではなく、スターダムの頂点のベルト一本に目標を絞ったのだ。
「絶対にリベンジしたかった。だから30分時間切れのドロー防衛は嫌だったんです。まして岩谷麻優は“アイコン”と呼ばれるスターダムの象徴。やっぱりこの選手に勝たなければ真のチャンピオンとは言えないですから」
自分はスターダムの中で実力を証明できているのか。誰もが認める結果を出すことができたのか。朱里はそのことを常に意識していた。昨年、リーグ戦「5★STAR GP」でマーベラスの彩羽匠と対戦した際には「スターダムを背負って」と言いたくても言えなかった。ワールド王座を獲得していない自分は、その言葉を使う立場にないと考えたのだ。
ワールド・オブ・スターダムのベルトは“赤いベルト”とも呼ばれる。朱里はSNSなどで「あかいベルト」と書いてきた。その意味するところは「朱いベルト」なのだが、そう表記するのは「初防衛に成功してから」と決めていた。