派手なパフォーマンスやリップサービスとは無縁で、ときに「鉄仮面」とも言われたが、ユニフォームを脱いだ鳥谷氏は実に雄弁だ。論理的な解説はもちろん、テレビ番組では聞き手が求めるコメントを即座に口にするなど“瞬発力”の高さも見せる。

「（現役時代は）喋る必要がなかったので喋らない。今は喋らないとテレビに出られないので喋る、という単純な作業です（笑み）。現役の時は、余計なことを言うことがマイナスなので、何も言わないに越したことはない。基本的に、自分の情報は人に与えないということを守っていました。全てのポジションはそれぞれ1人しか守れないですからね。そこで余計なことをしたら、自分のポジションを失う可能性もありますし。もちろん、プライベートやチームで食事に行ったりした時は、ガンガン喋っていましたよ」

©Nanae Suzuki

社会人野球のコーチに就任した理由

　野球解説に加えて新たに挑戦するのが、社会人野球・パナソニックのコーチ就任だ。大阪・門真市に本拠地を置き、都市対抗野球大会で準優勝1回、日本選手権で優勝2回を誇る名門。埼玉・聖望学園高から早大に進みプロ入りした鳥谷氏が、縁のない社会人野球に携わるきっかけは何だったのか。

「たまたま話をいただいたのですが、その時に自分が唯一経験してないところ、という意味で興味を持ちました。あとは、指導者ということを考えたときに、選手たちに色々な幅があるということですね。大学ならば4年間しかないですが、年齢にも幅がある。加えてプロを目指している選手もいれば、そうではないけれど社会人野球として続けている選手もいる。その中で自分がどういうことを教えられるのか、引き出せるのか。この先、自分がプロの指導者になるのか、アマチュアなのか分からないですが、現役中はできなかったことを経験させてもらえるのはありがたいです」

「この先、自分がプロの指導者になるのか分からない」 ©Wataru Sato

　3月からすでに練習に参加しており、今後は試合を見る機会も増える。未知の世界で刺激を受けることは多いという。

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