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ラグビーリーグワンの勝ち点問題を考える…試合中止になると、なぜ「5-0」と大差がつくの?《プレーオフ、入替戦に懸念も》
text by
大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph byNaoki Nishimura/AFLO SPORT
posted2022/02/04 17:01
第4節で逆転トライを上げた埼玉PR堀江翔太(36)。チームは第1節と2節が中止になりながらも、2連勝と“王者”の強さを見せつけている
「それは気の毒じゃない?」という言葉は当初から聞かれた。昨季のトップリーグ、あるいは大学の試合では、一方に感染者が出て試合ができなくなってもその責は問わなかった。昨季でいえばキヤノンと日野の試合が、日野にコロナ感染者が発生したことにより中止となり、双方に勝点2が与えられ、代替試合は行わなかった(引き分けと見なすということだ)。感染することは悪ではない。感染した者が責められてはいけない、という理念がそこにはあった。
リーグワンは異なる見解を取っている。
これは強者の側に立った自由競争、いわば新自由主義のアプローチ。一方が感染者を出すことによって、もう一方が最大の勝点(5)を得る機会を奪われるのは不当だ、補填されるべきだという発想だ。リーグワンはチームに事業化、社会化を求めている。努力したチームはそれが足りないチームよりも利益や評価を得るべきだ、悪平等は廃すべきだという考え方である。
リーグの実施要項を協議したのは昨年11月頃。当時は感染者がゼロに近づいていた頃だ。「コロナ感染対策の知見は集まった」「注意すればコントロールできるウイルスだ」という認識のもとで要項は決まった。実のところ、これはチーム側(特に上位チーム)が強く要望したことでもある。それゆえ、チーム側から表立った不満は出ていない。
とはいえ、現実はややこしい。
各エリアの保健所に左右される現状
リーグでは毎週PCR検査を行っている。この結果は白黒はっきりしている。問題は陽性者が出た場合、何人が濃厚接触者と判定されるか――チーム活動を継続できるかどうかはそこにかかっている。濃厚接触者ではないと判定されたメンバーは通常のチーム活動が可能だ。だが、保健所がそれを判定するのにどのくらいの時間がかかるかは地域の事情によって、各保健所の事情によって異なる。
一方のチームに感染者が出て試合中止が決まったあとで、もう一方のチームにも感染者が出て、試合当日は活動停止していたケースがある。その時点では「濃厚接触者はいない」と判定されていたのだが、その後に行ったPCR検査の結果、改めて陽性者が見つかり、やはり「濃厚接触者がこれだけいた」という判定が下ったのだ。
別のチームでは感染者が出た後でも保健所の濃厚接触者判定が下らず、リーグの内規に従って活動を再開したが、対戦チームの不安を解消できず、結果的に中止となったケースがある。
別のチームでは速やかに保健所が「濃厚接触者はいない」と判定。5日間の活動停止で再開できたケースがある。
中には、選手やスタッフが複数の市、県=複数の保健所管内にまたがって居住しているため、ヒアリングなどの手続きに二重三重の時間がかかったケースもある。
さまざまな事例の背後に見えるのは感染爆発による医療体制、保健所業務の逼迫だ。保健所の手続きにかかる時間で、試合登録メンバーが揃うかどうかが左右される。それは、チームでコントロールできる範囲を超えている。しかし、それによって勝点「5-0」という大きな差がついてしまっているのが現状だ。