令和の野球探訪BACK NUMBER
《センバツ》中学時代の恩師が喜ぶ“3人そろっての甲子園” 敦賀気比の絶対的エース・上加世田頼希(3年)が信頼する2人の存在とは?
text by
高木遊Yu Takagi
photograph byYu Takagi
posted2022/02/01 17:01
センバツ出場を決めた敦賀気比を牽引する(左から)上加世田投手、岡村内野手、渡辺捕手。ともに門真ビックドリームス出身
当時、筆者が選手団と移動や生活をともにする中で印象に残っているのは彼らの“優しさ”だ。上加世田は両手いっぱいに学校やクラブの仲間たちへのお土産を持って帰り、渡辺は愛嬌溢れる明るい性格でチームメイトたちに笑いを届けた。
互いに欠かせない存在となった2人は、複数の強豪校からオファーをもらう中で敦賀気比高校に進むことを決めた。中学3年冬に取材した際は、相方への思いや高校での高い目標を屈託のない笑顔で語っていた。
「侍ジャパンでは捕手がナベちゃんだから助かることが多かったです。甲子園にもナベちゃんとのバッテリーで出たいですし、2人でまた侍ジャパンに入りたいです」(上加世田)
「敦賀気比に決めた一番の理由は(上加世田)頼希とまたバッテリーを組みたかったからです。侍ジャパンでは優勝できましたが、所属チームでは全国優勝を逃したので、高校では日本一になりたいです」(渡辺)
怪我を乗り越えた“同期”岡村の成長
敦賀に来て2年。グラウンドの後ろには山脈が広がり、寒さの厳しいこの土地で心身ともに成長を遂げてきた。
大阪からやってきた彼らにとって冬の厳しさは想像以上だったと口をそろえる。冬場は晴れる日が少ない日本海側特有の気候や降雪もあって、ほとんどが室内での練習になる。それでも渡辺が「外でできない分、個々の能力を高めることを意識しました」と話したように、できることを全力で取り組んだ結果、着実に力をつけてきた。
昨年、上加世田は主に三塁手として出場し、甲子園でも活躍。渡辺は高い守備力を買われて試合終盤にマスクを被ることが多く、甲子園でも素早い動きで盗塁を刺した。
さらに2人とともに中学時代からチームメートの岡村颯樹(ふうき)も怪我を乗り越えて、秋に一塁手のレギュラーを掴んだ。門真ビックドリームスの監督を務める橋口和博さんは、年末のOB戦にやってきた3人と接して確かな成長を感じ取ったという。
「人間力や立ち振る舞いが立派になっていました。(初めてのベンチ入りが有力な)岡村は昨年のセンバツ前に肩を脱臼してメンバーから漏れましたが、野球の上手さでは3人の中で一番。今回が一番楽しみです」