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トップバレエダンサーが証言する“羽生結弦27歳の美しさ”「羽生さんも同じかもしれませんね」バレエで大ケガをして涙があふれた日
text by
いとうやまねYamane Ito
photograph byJMPA
posted2022/01/07 17:10
2014年のソチ五輪のエキシビションで羽生は『ホワイト・レジェンド』を披露。東日本大震災の復興へのメッセージを込めて演じた
もちろん、それが可能だったのは、毎日の練習の賜物であり、若さと、運もよかったのであろう。「羽生さんも同じかもしれませんね」と言葉を添えた。
それからは、体にお伺いを立てるようになったという。
「自分自身と、自分の肉体。そのふたつを別々に考えるようにしました。実際はふたつで一人なんですけど(笑)、男女みたいなものです。カップル。常に会話をして『今日はどう?』『元気?』『どお?』『元気?』と。でも甘やかしすぎると良くない関係になってくる。男女でも倦怠期があったり、色々あるじゃないですか。会話が通じない時もあれば、凄く通じる時もある。甘やかし過ぎると緊張感がなくなってしまうし、いじめすぎると去ってしまう」
精神と肉体にもバランスが必要だという。大怪我した時は、そのバランスが完全に崩れていて、どうしようもなかったらしい。
「誰も意見を言っちゃいけないです」
怪我と隣り合わせのバレエダンサーとフィギュアスケーター。
ベテランになればなるほど、そのリスクは高まるし、それによって表現方法を変えていく必要性も出てくるはずだ。そのあたりの模索はどのように考えているのだろうか。
「世の中で何が起こっているかというのを常に知っておきたいですね。だから常にフットワークを軽くして、自分よがりにならず周りに目を向けるようにしています。スケート界もそうかもしれませんが、どうしてもダンスという閉ざされた狭い世界で、そこの小さな問題にとらわれていると、どんどんどんどん自分自身が小さくなる。なるべく……もちろん白鳥を踊るときは白鳥の湖のことを考えるのは大事ですけど、もっと世の中には色々なものがあるんだということを意識しながら生きると、それこそ色々なものが見えて、自身が演じる白鳥も変わってくるのではないかなと、僕は思いますけどね」
そのまま羽生さんへのメッセージのような感じですね、と言うと、こう返ってきた。