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トップバレエダンサーが証言する“羽生結弦27歳の美しさ”「羽生さんも同じかもしれませんね」バレエで大ケガをして涙があふれた日

posted2022/01/07 17:10

 
トップバレエダンサーが証言する“羽生結弦27歳の美しさ”「羽生さんも同じかもしれませんね」バレエで大ケガをして涙があふれた日<Number Web> photograph by JMPA

2014年のソチ五輪のエキシビションで羽生は『ホワイト・レジェンド』を披露。東日本大震災の復興へのメッセージを込めて演じた

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いとうやまね

いとうやまねYamane Ito

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JMPA

 昨年末の全日本選手権を経て、フィギュアスケートの北京五輪代表選手が決定。発売中のNumber1043号フィギュアスケート特集では、全日本選手権で圧巻の優勝を遂げた羽生結弦をはじめ、代表選手たちのここまでの北京五輪シーズンの戦いを振り返っています。

 同号に収録した「アーティストが語る羽生結弦歴代プログラムの美」では、バレエダンサーの首藤康之さんにインタビュー。羽生の過去の『ホワイト・レジェンド』の演技を見て感じたことを語ってもらいました。誌面に掲載できなかった内容を本記事では紹介します。

 名門東京バレエ団で主役を演じ、モーリス・ベジャール直々の指名による『ボレロ』では世界を沸かせた。現在も第一線で表現し続けるバレエダンサー・首藤康之は、かつて演出家・振付家マシュー・ボーンによる『スワン・レイク』の舞台に立ち、主役の「白鳥」と「王子」の両方を演じた。

 発売中のNumberでは、「白鳥」繋がりということで、羽生結弦のプログラム『ホワイト・レジェンド』について語っている。ここでは誌面に収まりきらなかった話をご紹介したい。

 バレエダンサーに「怪我」は付き物だ。フィギュアスケーターとのあまり有り難くない共通点である。

 首藤も公演中に足の靱帯断裂という大怪我を負った経験がある。舞台『スワン・レイク』で「白鳥」を演じた時のことだ。

「フランス公演だったんですが、第2幕のソロの最後のところで、何か音がした! と」。その後、無理に続けようと試みるも動けず仁王立ち。相手役のダンサーに袖に押しやってもらい、すぐさま病院に運ばれた。

 衣裳もメイクもそのままである。舞台は第3幕から他のダンサーが引き継いだ。

 病院では、腫れのせいで脱げない衣裳にハサミが入れられた。その時はじめて事の重大さに涙が溢れたそうだ。

 話を聞いていて、ふと羽生の姿がよぎった。

「羽生さんも同じかもしれませんね」

 フィギュアスケーターには代わりはいない。羽生が倒れれば、それは本人の成績に直結する。一方、バレエダンサーには、次の主役を待つ別のダンサーが列をなしている。トップの世界はドラスティックだ。どちらの立場も、通らずに済むのならば幸いである。

「当時は年間150ステージとかやってたんです。肉体の酷使という感じで。自分自身が肉体に歩み寄って、肉体と会話をするということは、17~8年間ほとんどしたことがありませんでした」

 小さな怪我ならば過去に幾度もあったらしい。でも舞台に立つと、首藤いわく「何か精神が肉体を支配して、普段では出来ないことを可能にしてしまった」とのこと。要は、そのままやり続けたわけだ。

【次ページ】 「羽生さんも同じかもしれませんね」

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