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《フィギュア全日本》代表争いの行方は? エース紀平梨花欠場で女子は大混戦、羽生結弦は「今季初戦でも有力」と言えるワケ
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byGetty Images
posted2021/12/22 17:02
全日本選手権にて今季初出場となる羽生結弦(左)と、ケガでの欠場が発表された紀平梨花
紀平不在でも激戦…女子はどうなる?
本来の実力を発揮できれば十分、代表の有力候補であったであろう紀平が欠場した女子に目を転じると、グランプリファイナルに日本人でただ一人進出した坂本の、これまで以上に質を上げての安定感が光る。自分がどこで勝負するかを考え、4回転ジャンプやトリプルアクセルに挑むのではなく、持てる力を最大限に発揮する方向を模索し、それが功を奏している。
復帰して2シーズン目の三原もグランプリシリーズ2戦で自己ベストを更新するなど、復調と言うにとどまらず上昇気流の中にある。さらには宮原知子、樋口新葉らもそれぞれに成長を志してきた。1つのミスが左右しかねない、熾烈な競争が予期される。
直前での欠場発表…紀平の胸中は
最後にもう一度、紀平に触れておきたい。
全日本選手権に出場できなくても、世界選手権3位以内の実績があれば選考対象の1人として考慮される余地があったが、紀平の最高成績は4位。表彰台に上がったことはない。つまり欠場とともに、紀平の五輪出場は消えた。
大会欠場の要因となったのは7月に傷めた右足首痛だった。22日に正式に欠場を発表した際、診断名も明かされたが、右足の距骨疲労骨折であったという。
それ以前には腰痛に苦しみ、4月以降は練習を休まざるを得なかった時期もあり、ジャンプをひと月以上練習できない期間もあった。それでも身体のコンディションと闘い続けたのは、大舞台に立つという目標が揺るがなかったからだ。11月には氷上以外のトレーニングに注力し、できることに努力を傾けた。
全日本選手権もぎりぎりまで出場を模索した。その上での決断だった。
「少しでも早く氷上での元気な姿を見て頂けるよう、今は治療に専念することに致します」
試合での結果以上に、試合の場に立てないことこそ、選手にとっては悔しいことだ。紀平の心中はいかばかりだったか――。それでも折れることなく、紀平は氷上に思いを募らせる。
五輪代表を目指し、あるいはそれぞれの目標を持ち、2021年を締めくくる大会に歩を進めた選手たちが、無事悔いのない演技を行えることを祈りたい。
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