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「やっとこの日が来た」伊藤美誠&早田ひな“2年半ぶり復活”もリベンジならず…因縁の中国ペアに勝機はあるか 

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高樹ミナ

高樹ミナMina Takagi

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photograph byItaru Chiba

posted2021/12/07 11:02

「やっとこの日が来た」伊藤美誠&早田ひな“2年半ぶり復活”もリベンジならず…因縁の中国ペアに勝機はあるか<Number Web> photograph by Itaru Chiba

世界卓球選手権で2年半ぶりにペアを組んだ伊藤美誠(右)と早田ひな。2019年ブダペスト大会のリベンジとはならなかったが、銀メダルを獲得した

 だが、当然のことながら中国の2人も進化を遂げていた。特に王曼昱の成長は目覚ましく、東京五輪が終わった9月には「中国のオリンピック」といわれる全中国運動会で女子シングルス初優勝。準決勝で東京五輪女子シングルス金メダリストの陳夢、決勝でライバルの孫穎莎をいずれもストレートで下す破竹の勢いだった。

 彼女はもともと、今年9月に現役を引退した中国の元エース・丁寧の後継者といわれる逸材だ。2014、2015年の世界ジュニア選手権を連覇するなど国際大会での活躍も早かった。

 ところが、プロツアーでは2017年ライオン卓球ジャパンオープン荻村杯でツアーデビューした孫穎莎が先に女子シングルスで優勝。そこから孫の存在感が増していった。

 日本でも女子選手の競争は激しいが、それ以上に選手層が厚く厳しい環境の中国。ジュニア時代から将来を嘱望されていた王は孫の台頭に忸怩たる思いを抱えていたに違いない。

 だが王は変わった。以前は食が細く体の線も細かったが、今では食事の量が増え一回り体が大きくなった。トレーニングによって下半身もしっかりし、すらりと細かった手足は驚くほど筋肉がついて太くなった。

 主要大会で結果を出し自信もついたのだろう。東京五輪でも世界卓球選手権ヒューストン大会でも要所での思い切ったプレーと精度の高さに何度も唸らされた。

強烈だった王のチキータ

 みまひなペアは中国ペアとの決勝序盤を互角に戦った。だが、中国ペアが第1ゲームを奪うと次第に中国のペースに。

 特に中国ペアはチキータレシーブからの展開で伊藤のバック側を攻めミスを誘った。上回転のかかったチキータは伊藤が放つバック表(ラケットのバック面に表ソフトと呼ばれるラバーを貼っている)の変化のあるボールを封じるのに効果的だ。

 とりわけ王のチキータは強烈で、伊藤や早田、準々決勝で王/孫ペアに敗れた石川佳純と平野美宇のペアも「回転量とパワーがすごくて取りづらい」と口を揃える。

 また、伊藤のバック側を攻めた次のボールで左利きの早田をフォア側へ振り、2人の位置を重ねる戦術も駆使。早田は試合後、「2、3ゲーム目は(相手ペアに)余裕を持たれて、自分たちの難しい所にボールを返された。後半になるに連れて自分たちの卓球がどんどんできなくなっていった」と話している。

 もちろん、みまひなペアも王と孫の動きを重ねる戦術を使ったり、伊藤の得意なバックハンドのダブルストップ(相手が短くストップしてきたボールをストップで返す技術)やフリック(短く返ってきたボールを払うように打ち返す技術)などの台上プレーを生かすため、早田が短いサーブやストップレシーブでチャンスを作ったりした。

 だが、それらにことごとく対応してくるのが中国の強さ。

 早田は「私にストップをさせないように上回転のサーブを出してきたり、伊藤選手のサーブに対し斜め(対角線方向)の揺さぶりをかけてきたりした」と言い、伊藤も「何をやっても相手に上手くやられるなという感じで、自分が台上に入って攻撃しても結局、いいコースを狙われてしまう」と困惑気味に話した。

【次ページ】 「セオリー通りにやっても…」

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