酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「僕は一番へたくそなんで…」楽天ドラ3前田銀治は、保育園児と仲良しになれる愛されキャラ《公立高校生の野球教室》
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKou Hiroo
posted2021/11/16 11:01
地元の子どもたちとの野球教室で笑顔の前田銀治
「前田に調査書が11枚も来たのは驚きました。ちゃんと返信させるために下書きをして何度も書き直して記入させました。それも大事だと思います。
ドラフト指名が決まってからは毎日のようにメディアの取材がありましたし、あいさつ回りなどもあったのでずいぶん時間をとられて、選手を指導する時間が減ったんですね。教え子がドラフトにかかるのは初めてでしたから、いい経験でしたが、ちょっと残念でもありました」
一昨年、ドラフト上位での指名が確実視され、調査書を複数貰っていた高校生が指名を見送られたが、調査書の返信がひどい内容だったことが一因になったと言われている。ドラフトは高校生が社会人として一歩を踏み出すことでもある。つまり、大人の適切な手助けが必要なのだ。
後輩たちも「先輩が指名されて嬉しくて泣いてしまった」
話を戻そう。先輩がプロ野球に進んだことは、三島南の選手たちには何よりの励みになったはずだ。この日、選手を代表して園児たちに挨拶をした主将の深瀬涼太は甲子園でもマスクをかぶった。
「前田先輩とは中学時代のスルガボーイズでも一緒に野球をしていました。だからドラフトで前田先輩が指名されたときは、嬉しくて泣いてしまいました。前田先輩はすごい選手ですが、僕も高校卒業後も野球を続けてプロに行きたい」
前田は保育園でも人気者で、保育士さんは「私、前田君の小学校の先輩なのよ」といったような話で盛り上がっていた。また、子どもたちもにこやかな表情の前田になついている。親しみやすいキャラクターは彼の魅力になっていくだろう。
高卒ドラフトで指名された選手の中には、契約金で高級な外車を買い、生活が一変してしまったケースもある。彼の場合はどうなのか? 最後におせっかいではあるが聞いてしまったところ……その返答は、とても頼もしいものだった。
「お金のことは全然わからないので、両親に全部まかせます。まさかドラフトにかかるとは思わなかったので両親は驚いていましたが、すごく喜んでくれて、僕の背中を押してくれました。これからも野球で精いっぱい頑張るだけです」