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ルメールが「グランアレグリアの後継ぎ」と絶賛した馬も! 今年デビューのキタサンブラック産駒が活躍できる理由とは?
posted2021/11/13 06:00
text by
片山良三Ryozo Katayama
photograph by
Keiji Ishikawa
アイドルに憧れる心理を「同一化」というが、種牡馬の選択行動はまさにそれ。生産者が高額な種付け料を支払うのは、父の華やかな現役時代の走りを受け継いでくれないかと期待してのものだからだ。
'17年の有馬記念優勝を花道として競走馬を引退したキタサンブラック(父ブラックタイド、母シュガーハート)は、種牡馬になって4年目。'18年から種付けを開始し、初年度産駒たちが今年競走年齢を迎えた。競走馬としては晩成だったキタサンブラックだが、その2世たちは2歳戦から活躍を重ねて、父の名をさらに上げる働きをしている。
馬産地の評価は必ずしも高くなかった。出だしの種付け料は話題性込みの500万円だったが、翌年には400万円に値下がりし、今シーズンは300万円とさらに下がっていたのだ。理由は仔馬の姿に派手さが足りなかったことと、本格化の遅さへの懸念だ。
早くデビューして、3歳シーズンの前半までに結果を出さないと生き残れなくなっているのが、現代の競馬に横たわる制度面での高いハードル。父似の成長力に優れた子が生まれたとしても、晩成の血を強く引き継いでしまったら苦労の方が多いと見られたのだろう。
ルメールが「グランアレグリアの後継ぎ」と絶賛した産駒
しかしジュニアたちは頑張った。夏番組のうちに5勝をあげ、勢いは実りの秋を迎えてさらに増した。菊花賞の週を終えた時点での11勝は、ドレフォンの13勝には及ばないにしても、シルバーステートと並ぶルーキー種牡馬の2位。1600mで2勝、1800mで6勝、2000mで3勝と、クラシックを狙えるディスタンスで勝ち上がっているのも魅力だ。
スター候補も出現した。10月10日の東京芝1600mを楽勝したラスール(牝2歳、母サマーハ、その父シングスピール、美浦・藤沢和雄厩舎)がそれで、手綱を取ったルメール騎手が「グランアレグリアの後継ぎができました」と絶賛したほどだ。
キタサン産駒のドグマ(牡2歳、母ショウナンカラット)が勝ち上がっている武幸四郎調教師が、「キタサンブラックは母の父がサクラバクシンオーというのが効いていて、重たさが薄められているのがいいんです」と、血の不思議を解説した。キタサン祭りは、何度でも開催されるのかもしれない。