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イチロー台頭は四半世紀前、合併から16年、阪神人気に隠れ続け… 関西在住筆者が昭和から見た《近鉄・オリックス悲哀史と栄光》 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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posted2021/10/28 17:02

イチロー台頭は四半世紀前、合併から16年、阪神人気に隠れ続け… 関西在住筆者が昭和から見た《近鉄・オリックス悲哀史と栄光》<Number Web> photograph by JIJI PRESS

2004年オリックスvs近鉄の最終戦後、胴上げされる近鉄の礒部公一選手会長(当時)。合併から16年、「オリックス・バファローズ」がパの頂点を掴んだ

吉田正、山本由伸、宮城、杉本が台頭

 2015年ドラ1で入団し2016年にデビューした吉田正尚は、このオフの台湾でのアジアウィンター・リーグで打率.556、6本塁打、29打点という破格の成績を残すと台湾のスポーツ紙を沸かせ、翌年から若き中軸になった。

 翌年ドラフト4位で入団した山本由伸は、2年目にはセットアッパー、3年目には先発として活躍。切れのある速球と一級品の変化球で瞬く間に「日本のエース」にのし上がった。2019年のドラフトでは、外れ外れ1位で宮城大弥が入団。2年目の今年、左のエースに成長した。

 さらには、吉田正尚がドラ1で入団した2015年、最下位のドラフト10位で入団した杉本裕太郎は、大学の後輩、吉田が目覚ましい活躍をする中で、5年間もくすぶっていたが今年、不動の4番打者に。筆者はオフに杉本が「フライボール革命」を取り入れるために努力をしていたのを知っているが、今年、それが見事に花開いた。こうして「優勝」へ向けたパーツが少しずつ揃っていったのだ。

 しかし――今年3月30日に松井一郎大阪市長が「国道25号線=御堂筋で優勝パレードを」と言う願いを込めて「R25」の背番号のユニフォームで始球式をした時に、これを「お愛想」以上のものだと受け止めた人はどれだけいただろうか?

後期日程表を見て「日本シリーズまで入ってるで」

 それから半年後の9月、ほっともっとフィールド神戸の入り口で、あるファンが、球団が配る後期日程表を見て「おい、日本シリーズまで入ってるで」と言った。筆者は確認できなかったが、例年のオリックスの後期日程表はペナントレースの終わりまでしか印刷されていないのかもしれない。「ポストシーズンがある」と言うのは、なんとウキウキすることなのだろうか!

 吉田正尚はデビュー当時「門田博光の再来」と言われたが、今年の打撃を見ていると「足が速くないイチロー」なのかもしれないと思う。

 田中将大のツーシームを一振りで左中間スタンドに放り込んだスイングの鋭さ、オールスターのホームランダービーでバットを水車のように振り回してホームランを連発したパワー、そして変化球を軽打して二塁打にするバットコントロールと、多種多様なバッティング能力を身に付けているからだ。

 今年の前半は、吉田正尚がチームを引っ張った。しかし9月に入り、吉田は東京オリンピックの疲れもあったか左足を負傷。さらに10月には右手に死球を受けて骨折し戦線離脱。「代わりの打者などいない」と中嶋聡監督が嘆く中、チームは優勝争いから脱落するかと思えたが、残った選手の獅子奮迅の踏ん張りで、優勝を勝ち取ったのだ。

【次ページ】 近鉄、新旧オリックスファンのすべてをつなぐ優勝

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