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武豊「クロフネという名で外国の馬を負かしに行きたかった」 “伝説のジャパンCダート”は世界を震撼させた 

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秀間翔哉

秀間翔哉Sanechika Hidema

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photograph byフォトチェスナット

posted2021/11/06 11:02

武豊「クロフネという名で外国の馬を負かしに行きたかった」 “伝説のジャパンCダート”は世界を震撼させた<Number Web> photograph by フォトチェスナット

ダートGI・2勝馬につけた着差は7馬身。圧巻の走りを披露したクロフネ

 秋は天皇賞・秋を最大目標に定めて始動したが、外国産馬の出走枠の関係で同レースを除外になってしまう。陣営は「せっかく仕上げたのにもったいない」と妥協策で武蔵野Sへの出走を決定したという。初ダートとなったここで終始楽な手応えのまま2着に9馬身差、タイムにして1秒4も突き放す圧勝を見せ、隠していた才能を開花させると、次走には前年に創設されたGⅠジャパンCダートを選択して強豪との対決に挑んだ。

 春の王者ノボトゥルーや前年の覇者ウイングアロー、さらに北米の一線級リドパレスを含む海外から5頭の招待馬を加え、粒揃いとなった第2回ジャパンCダートだったが、その中でもクロフネは1.7倍の抜けた1番人気に支持された。

 伝説は、早くも2コーナーから始まった。

他馬とは能力の絶対値が違った「強すぎる! 強すぎる!」

 スタートをそろっと出て後方4番手の外目に位置すると、クロフネは圧倒的な能力値の差によってポジションを押し上げていく。3コーナーの手前、ひと際大きな歓声が起こった。手綱を取った武豊の手が軽く動くと、クロフネが瞬時にギアを上げて外目をスーッと上がっていく。必死に抵抗を試みる他馬たちがその迫力に威圧されるかのように為す術もなく飲み込まれていく様子は、まるで軍艦が引き波をともなって海原を裂いていくような情景にすら見えた。セオリーから考えれば「早仕掛け」と言わざるを得ない大胆なロングスパートだったが、4コーナーの手前で先頭を奪い取ったクロフネの脚色は直線を迎えても一向に衰えることはなく、むしろ加速した。

 他馬とは能力の絶対値が違う。モノが違う。水しぶきの代わりに砂塵を巻き上げながら府中のダートを航行したその軍艦は、GⅠという舞台で7馬身もの大差をつけてレースを終えた。

「強すぎる! 強すぎる!」

 レースを伝えた実況の飾らない言葉が、何よりもその場の空気を伝えた。

米現地誌もびっくり「日本には『クロフネ』という名の…」

「言い訳はしない。勝った馬が強すぎた」

 リドパレスに騎乗したジェリー・ベイリーに、そう言わしめるほどの強さ。

【次ページ】 「クロフネという名で外国の馬を負かしに行きたかった」

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