競馬PRESSBACK NUMBER
武豊「クロフネという名で外国の馬を負かしに行きたかった」 “伝説のジャパンCダート”は世界を震撼させた
posted2021/11/06 11:02
text by
秀間翔哉Sanechika Hidema
photograph by
フォトチェスナット
米国競馬界における伝説の名馬、セクレタリアトと並べて語られたことのある馬が、ゼロ年代の日本にいた。その馬の名は、クロフネ。マル外の実力派として早くから芝レースで活躍していた彼が、除外によってダート戦へ挑んだことが、伝説のきっかけとなる。
競馬を愛する執筆者たちが、ゼロ年代前半の名馬&名レースを記した『競馬 伝説の名勝負2000-2004』(小川隆行+ウマフリ/星海社新書)から一部を抜粋して紹介する。〈ネオユニヴァース編、ハルウララ編に続く〉。
◆◆◆
「アンタッチャブルレコード」
今後、一切塗り替えることが不可能であろうと言われている記録のことを俗にこう呼ぶ。広く知られているところで言えば、王貞治選手の通算868本塁打や吉田沙保里選手の世界大会個人戦206連勝などがそれに数えられるだろう。
競馬界にもこのような記録はいくつか存在し、日本においては武豊の通算勝利記録や武幸四郎の重賞制覇までの最短記録などがこれにあたると言える。
では、サラブレッドに目を向けた時はどうだろうか。近年、育成技術の確立や馬場の造園技術の向上等も相まって、平均的な走破時計は凄まじい勢いで短縮されているが、それでも「アンタッチャブルレコード」なるものは存在する。
ダート2400mの世界レコード「2分24秒0」
代表的なものが1973年にアメリカのクラシック三冠の最終戦ベルモントSでセクレタリアトによって樹立されたダート2400mの世界レコード「2分24秒0」。樹立から半世紀が経とうとしている今もなお、24秒台はおろか25秒台を記録した馬さえおらず、26秒台ですら稀だ。2400mで施行されたベルモントSの直近10 年の平均タイムが2分28秒台であることからもそれがどれだけ突出したレコードタイムかが窺い知れる。
タイムや実績からサラブレッドという枠組を超え「アスリート」としてアメリカのスポーツ界に名を刻むセクレタリアトだが、彼に肩を並べて報道された馬が20年前の日本にいた。
01年に外国産馬に門戸が開かれたクラシック制覇を目指し、かつてのペリー提督率いる軍艦になぞらえて名付けられた芦毛の牡馬、クロフネ。
伝説となった「ジャパンCダート」
クロフネは陣営の期待に応えてNHKマイルCを制すると、目標であった日本ダービーに駒を進め2番人気に支持されて5着に健闘した。