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樋口新葉は成功して1位、坂本花織は入れず4位も「伸びしろしかない」…北京五輪代表を懸けたトリプルアクセルの取捨選択
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2021/10/10 11:00
樋口は4年前の平昌五輪は惜しくも代表入りならず。「4年前の悔しい気持ちを忘れることなく、この4年間を頑張ってきた」と意気込む
とりわけ、若い世代にあたる松生、河辺にとっては意味を持つ。
ロシア勢を中心に女子で加速したジャンプの高難度化に遅れまいと、日本の選手たちもより難しいジャンプを志してきた。その流れにのって、十代前半から習得に取り組む選手が増えている。先々を見据えてのことだが、今シーズンは北京五輪シーズンでもある。女子3枠をかけて競う1年だ。
シニアになって早々の歳若い選手が代表をつかむには、まずジャンプを武器とするのが得策だ。シニアでキャリアを重ねてきた選手と比べれば、演技構成点では相対的に低い点数にとどまるからだ。松生や河辺にとっては、世界で戦うため、という目標とともに、オリンピックへの道筋としてトリプルアクセルがあり、それらを含めてジャンプの得点への注力がある。技術点だけ見れば、ミスのなかった河辺がトップの得点を出したが、寄与したのはトリプルアクセルの成功だった。
トリプルアクセルを飛ばないという選択
6人中4人が挑む一方、トリプルアクセルを入れなかった坂本花織はこう語る。
「今は自分は(トリプル)アクセルを入れる予定はないです」
再度質問されたときもこう答えている。
「今の段階では、(入れる考えは)ないです」
また、練習でも取り組んできた4回転ジャンプについてはこう言及するにとどめた。
「今は答えられることはないです」
坂本が考えているのは、プログラムを完成させることだ。フリーの新プログラム『No More Fight Left In Me』は難易度が高く、今夏の大会で「全日本選手権がある4カ月後までにできる気がしないという気持ちもあって」と回避し、考えた末に挑む決意をした経緯がある。それもあって、高難度のジャンプよりも全体の向上を目指すという。