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「どうしちゃったんだ」の声を超えて…飯伏幸太が棚橋戦で“涙の復活” 〈史上初G1クライマックス3連覇〉のカギを握るのは?
posted2021/09/15 17:00
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
新日本プロレスの31回目のG1クライマックスが9月18日に大阪府立体育会館(エディオンアリーナ大阪)から開幕する。優勝決定戦は10月21日の日本武道館だ。今年も昨年に続いて秋の開催だが、2連覇中の飯伏幸太は史上初の3連覇を果たすことができるのだろうか。
過去30回のG1クライマックスの歴史の中で連覇したのは蝶野正洋と天山広吉と飯伏の3人しかいない。3連覇はまだ誰も達成したことがない。
リングに戻ってこられたことに、涙を流していた
9月4日のメットライフドーム(西武ドーム)。飯伏はリングから降りると立ち上がることができずに入退場口の1塁側ダッグアウト裏までずっと這った。
この日、飯伏は棚橋弘至との試合で復帰したが、この日まで2カ月近く試合を欠場していた。「誤嚥性肺炎」だった。咳は出なかったが、熱が出たという。
7月25日は東京ドームで鷹木信悟のIWGP世界ヘビー級王座に挑戦する予定だったが、ドクターストップで実現しなかった。「申し訳ない」という気持ちと同時にどうにもならない悔しさを感じていた。
その後、自分の道場で段階的に体を動かし始めて、体は絞れてきたが、息切れは続いた。ケガと違って、トレーニングのタイミングが難しかった。ペースを上げて動くとダウンし、発熱を繰り返した。スパーリングの映像を見たが、動いた後はやはり呼吸が苦しそうだった。
確かに棚橋との試合を見ていると、場外への飛び技も繰り出して、最初は「飯伏、動けるじゃないか」と思ったが、試合が進むと急激に疲労が見えてきた。最後は力尽き、棚橋のハイフライフローにフォールを奪われた。17分47秒。いきなりの実戦は道場とは違った。
敗戦は仕方なかった。むしろ、やっとリングに戻って来られたことに飯伏は涙を流していた。