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「アメリカのファンにインパクトを」中谷潤人23歳が初防衛戦で見せた“鼻骨折”TKOの衝撃…日本人ボクサーが海外防衛戦を行うメリットとは?
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byKYODO
posted2021/09/13 17:01
10日、WBO世界フライ級タイトルマッチにて初防衛を果たした中谷潤人(左)
日本人ボクサーが“海外防衛戦”を行うメリット
アメリカでの最初の試合で好結果を残したことにより、再びアメリカで試合ができる可能性を高めたことは大きい。中谷は将来のボクシング界を背負う逸材であることは間違いないとはいえ、現時点での知名度は決して高くない。そして人気が出るまでにはどうしても時間がかかる。そうした状況で、日本で世界タイトルマッチを開催するとなれば、テレビの全国放送で視聴率が取れるのか、集客はどうなのかなど、さまざまなハードルを超えなければならない。日本国内だけで安定して防衛戦を行うのはなかなか難しいのが現状だろう。
そうした理由から海外防衛戦という選択肢が増えることは今やすべての世界チャンピオンにとって望ましいことなのだ。さらに今回のプロモーターはアメリカ最大手のトップランクであり、CEOのボブ・アラム氏は村田諒太や井上尚弥をはじめ日本人ボクサーとの契約も少なくない。アジア、そして日本のボクサーに理解のあるアラム氏だけに、今後も頼れる存在になってくれることが期待できる。
中谷は試合の翌日、オンラインで記者会見を開き、「大事な一歩を踏み出せたのでこれからも精進したい」と語り、WBC王者フリオ・セサール・マルティネス(メキシコ)との統一戦を希望した。これがまだ実現するかどうかは分からないが、フライ級最強王者への歩みには大いに期待したいところである。23歳のチャンピオンはこれからまだまだ伸びる。ぜひ今のうちから中谷に注目してほしいと思う。キャッチフレーズはその優しげな風貌から“愛の拳士”だ。