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菊池雄星エース化計画もチーム再建も筋書き通りの新生マリナーズ、下馬評を覆し大躍進でワイルドカード争いに挑む
posted2021/09/11 11:00
text by
四竈衛Mamoru Shikama
photograph by
Getty Images
イチローがメジャーでデビューした2001年以来、ポストシーズンから遠ざかっているマリナーズが、レギュラーシーズンも佳境に入り、いよいよ正念場を迎えている。大詰めの9月に入り、ア・リーグ西地区で首位アストロズを追い上げ、「2枠」のワイルドカード争いでも、ヤンキース、レッドソックスに接近するなど、射程圏に入った。
オフに大型補強したわけでもなく、下馬評は低かった。実際、開幕直後は不安定な戦いが続き、5月23日の時点では借金「5」と低迷した。だが、その後は菊池雄星をはじめ先発陣の踏ん張りもあり、6月中旬までに借金を完済。5連勝を飾った9月5日には、貯金「13」と、上位争いに食い込んできた。
就任6年目で3度めのポストシーズン争いに加わるスコット・サービス監督は、積み重ねてきた手応えと自信を隠そうとしない。
「このチームはおもしろい。もし我々の試合を楽しめない人がいるとすれば、野球ファンじゃないだろう」
筋書き通りのチーム再建
菊池が移籍した19年以来、マリナーズ首脳陣は「3年後にポストシーズン争い」を公言し、大胆なチーム再建を進めてきた。直前のオフには、主軸のロビンソン・カノ、クローザーのエドウィン・ディアスをメッツへ、先発左腕ジェームス・パクストンをヤンキースへ放出し、トッププロスペクトを獲得。チームを解体し、世代交代に着手した。結果的に、東京での開幕シリーズがイチロー氏(現会長付特別補佐兼インストラクター)の「引退試合」になったのも、マリナーズにとって一時代の終わりを告げる象徴的な出来事となった。
19年は開幕ダッシュに成功後、中盤以降は急失速したものの、目先の勝敗だけにこだわることなく、若手選手の育成を最優先させてきた。1年目の菊池には、投球過多や蓄積疲労を考慮しながら、好不調の波があっても、シーズンを通して先発ローテーションの一角を任せた。
その間、サービス監督は、事あるたびに監督室に菊池を呼び寄せ、静かな口調で語りかけた。
「君は、オールスターに選ばれる投手になれる」