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《甲子園V》智弁和歌山の“元プロ”監督・中谷仁42歳は何がスゴいのか? 飾らない“兄貴分”で一蓮托生「批判は覚悟の上です」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byHideki Sugiyama
posted2021/08/30 17:01
甲子園で優勝を果たした智弁和歌山の中谷仁監督
決勝戦最大の難局を乗り切った智弁和歌山は中盤以降も点を重ね、「優勝候補」の兄弟校・智弁学園を9-2で圧倒。甲子園でも4試合全てで2桁安打と、高嶋が築き上げた「強打の智弁和歌山」を誇示してみせた。
名門校出身。元プロ野球。誰もが羨む看板にこだわらず、自分が監督となって初めて入学してきた選手たちと歩んできた。
そうしてたどり着いた場所が、監督としての甲子園初優勝だった。
――今日くらいスマホを見ますか?
元プロ野球選手で日本一となった監督は、夏は1982年、春は1986年の池田・蔦文也まで遡る。この快挙から、早くも中谷を「名将」と呼ぶ声がちらつき始める。
監督となって3年目。本人にその自覚は、毛頭と言っていいほどない。
「全てが勉強です。子供たちと一緒に模索しながらやっているんで、まだまだ自分の指導方針もないくらいで……」
そう笑い、「監督というより、口うるさいキャプテン」を自認する兄貴分の口調が優しくなる。
「毎日、彼らと接していると心が洗われるんです。とにかく必死ですから。成長に携われる幸せを感じています」
覚悟が結実した夏。
激闘の余韻はしばらく、中谷の手元を震わせ続けるだろう。祝辞や称賛。功績を刻む記事だって無数に届くに違いない。
優勝監督に聞いてみた。
――今日くらいスマホを見ますか?
「いやぁ……まあ、知り合いからのメッセージは、ちゃんと見るようにします」
少しだけ戸惑いながらも、その目はやはり、穏やかな光を灯していた。
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