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「ストレートの平均で160キロぐらいを投げて」今年20歳の佐々木朗希が明かす“壮大な未来図”…イチローや松坂大輔と異なる感覚とは
posted2021/08/27 11:04
text by
鈴木忠平Tadahira Suzuki
photograph by
Sankei Shimbun
二十歳のころ、自分の将来について、どれほどの未来図を描けていただろうか。そもそも人生の地図なんて持っていなかったような気がする。
ある日、「きょうは成人式だから」と言われ、ダボダボのスーツを着せられ、大人になった実感もないまま、何となく体育館に並んでいただけだったような憶えがある。自分に何ができるのかなんてわからず、成人の日が終わればまたアルバイトに行って、仲間と酒を飲んで、モラトリアムな日常に戻っていった……。
なぜ、そんなことを思い出したのかといえば、佐々木朗希がまもなく20歳を迎えると聞いたからだ。高校時代に、すでに160キロを超えるスピードボールを投げて、「令和の怪物」と呼ばれた選手は、つまりある分野において傑出した能力を持っている人間は、やはり明確な未来図を持っているのだろうか――。
「そうですねえ……、たとえば中学生くらいのときは、20歳になったら大学生になっているかなあと、それくらいにしかイメージしていなかったと思います。正直、何も見えてはいなかったです。今もチームにいると一番若いくらいなので、子ども扱いされますし、大人になった実感は全然ないです」
そう言った19歳9カ月の表情には、あどけなさが浮かんだ。
「まあ、20歳になって年齢を重ねていけば自由が増えると思うので、その中でも自分を律していければいいかなと思ってます。プロになって2年目ですし、少しずつ自覚を持ちながら、成績も残していかなければいけないので……」
色白の顔に物静かな口調も手伝ってか、彼は160キロを投げるピッチャーにしては控え目すぎるような気がした。世の多くの学生と同じように、まだ人生の地図を描けていないようにも見えた。