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350万が18億に…“格安だった”キタサンブラックを北島三郎はなぜ買った?「これほど勝つ馬になるとは」

posted2021/07/09 11:01

 
350万が18億に…“格安だった”キタサンブラックを北島三郎はなぜ買った?「これほど勝つ馬になるとは」<Number Web> photograph by ヒロタノリト

2017年有馬記念でGⅠ競争7勝目、通算獲得賞金JRA歴代1位に

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小川隆行

小川隆行Takayuki Ogawa

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ヒロタノリト

 いつまでも人々の記憶に残る名馬には2つのタイプがある。大逃げを打つたびに拍手が巻き起こり圧勝を続けたサイレンススズカは、誰もが勝ちを疑わなかった天皇賞・秋の第4コーナ手前で突然粉砕骨折を発症して競走を中止、安楽死となった。それとは対照的なのがキタサンブラックで、狙いどおりのローテで3年間の現役生活を走り抜け、20戦のうち3着を外したのは僅か2度という堅実ぶり。「無事之名馬」という言葉の意味を改めて思い知らせてくれた。

 競馬ライターの小川隆行氏を中心に、こよなく競馬を愛する執筆者たちが、歴史に名を刻んだスターホースの逸話をまとめた『アイドルホース列伝 1970-2021』(星海社新書)から一部を抜粋して紹介する〈サイレンススズカ編を読む〉。

◆◆◆

脅威の回収率500%超え「配当妙味が高かった馬」

 シンボリルドルフ、テイエムオペラオー、ディープインパクト、ウオッカ、ジェンティルドンナ、キタサンブラック、そしてアーモンドアイ。以上の8頭は芝GIを7勝以上した名馬中の名馬である。ほとんどの馬が人気を背負う中、競馬ファンがもっとも馬券の美味に気付かなかった、つまり配当妙味が高かった馬こそキタサンブラックである。

 各馬の単勝を出走のたびに買った際の単勝回収率は次の通りだ(海外レース除く・Number Web以外でご覧になっている方は記事末尾の「関連記事」から ◆各馬の単勝勝回収率 をご覧ください)。

 国内で13戦したディープインパクトの単勝を1000円ずつ買った場合、1万3千円は13650円にしかならない。わずか650円の利益である。対して国内20戦のキタサンブラックは2万円が11万4200円にもなっている。

その強さに気づけなかったのはなぜか?

 これらの数値は馬のイメージや人気に左右される。デビュー2戦目の若駒Sで目の覚める追い込みをみせたディープインパクトは、多くのファンや予想家が早々に最強イメージをもった結果、国内出走13戦すべてで単勝130円以下に支持された。

 対するキタサンブラックはデビュー2戦目に48倍の単勝配当となり、10倍以上の払い戻しも何と4回。3歳時は誰もその強さに気付いていなかった。

【次ページ】 もっとも支持率が高かった宝塚記念は惨敗

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