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350万が18億に…“格安だった”キタサンブラックを北島三郎はなぜ買った?「これほど勝つ馬になるとは」
text by
小川隆行Takayuki Ogawa
photograph byヒロタノリト
posted2021/07/09 11:01
2017年有馬記念でGⅠ競争7勝目、通算獲得賞金JRA歴代1位に
「身体が薄く線が細く脚が長かった。ただ、目と顔をみて買うことにした。写真を撮るときに暴れるのはスターの素質があるとも感じた」
GI7勝を挙げたころには「これほど勝つ馬になるとは思っていなかった。お前を見損なっていたと謝りたいです」と述べている。
馬主からして、それほどの期待を抱いてはいなかったわけであるが、それもそのはず。サブちゃんの所有馬のほとんどは中小牧場の生産馬であり、ディープインパクト産駒は1頭もいない。芸能界で頂点を極めたサブちゃんを支持していたのは名もなき多くの一般人であり、一種の反骨精神がキタサンブラックとつながった要因ではないだろうか。
格安馬により常識外れの大成功
ディープインパクト産駒の活躍で長らくノーザンファームの一強時代が続いている。活躍する馬は常に高額で、一部の金持ち馬主しか手が出せない。キタサンブラックが有馬記念で惜敗したサトノダイヤモンドなど2億4000万円で取引されている。
サトノダイヤモンドは8億円を稼いだが、キタサンブラックは倍以上の18億円を稼いだ。格安馬による常識外れの大成功であり、それは長きに渡り中小牧場を支えてきた北島三郎に、神様が与えたご褒美だった気がする。
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小川隆行(おがわたかゆき)
1966年生まれ。牡55。競馬ライター&編集者。中山競馬場の近くで生まれ育ち、競馬場から徒歩5分の高校で競馬に目覚め馬券買いを始めダイナカールに恋をする。拓殖大学卒業後、競馬雑誌編集者になり数多くの調教師、騎手、厩舎関係者、競馬予想家に取材を重ねてきた。主な著書に『アイドルホース列伝 1970-2021』(星海社)などがある。