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高校ラグビー部の監督はなぜ「部活をクラブに変えた」のか? 生徒を苦しめる“勝利至上主義、補欠文化”からの脱却で目指すもの
posted2021/06/23 11:01
text by
島沢優子Yuko Shimazawa
photograph by
湘南アルタイルズ提供
神奈川県立平塚工科高校ラグビー部「アルタイルズ」が、今年度から同校生徒以外の外部生も加入できるクラブチーム「湘南アルタイルズ」として始動した。同校教員でもある松山吾朗監督(44)によると、ラグビーの高校のクラブチームは神戸と福岡に2チームあるものの、高校ラグビー部が母体となったものは全国初だという。
クラブの参加資格は高校生及び、高校年齢の男女。「ラグビーを愛する、仲間をリスペクトできる者」で、居住する地域や通う学校は問わない。練習は週3回だが、週1回や月に数回の参加でも加入できる。クラブの外部生は、全国高等学校体育連盟が主催する花園などの大会には出場できないものの、他校との練習試合や公式戦には出場できる。松山監督はクラブチームとして出場する試合を増やすために独立したリーグの設立も手掛けている。
「取り組み方はそれぞれ違っていい」
現在部員は44人。そのうち外部加入は目下4人だ。ひとりは県内のラグビースクール出身者だが、進学した高校にはラグビー部がなかった。プレーを諦めていたところ、そのことを偶然知った松山監督から「練習においで」と誘われ加入した。東京の私立高校ラグビー部に所属しながら、湘南アルタイルズでプレーする選手もいる。通っている高校では部員が10人を切り専門顧問もいないため、湘南アルタイルズとの活動を両立させている。また、平塚工科高の「元部員」もいる。勉強との両立がうまくいかずいったん退部したものの、「(湘南)アルタイルズならやれそう」と戻ってきた。
「学業と両立したい、高校に部活がないといった生徒の受け皿になればいい。取り組み方はそれぞれ違っていい。ラグビーが好き、このチームが好きという気持ちを共有できればいいと思う」
そう話す松山監督が掲げるアルタイルズのチーム理念「多様な背景と個性を持つ人間がワンチームを結成することで、ラグビーの魅力をより楽しむことができる」は、ブカツというより、クラブ的だ。これまであった「目標に向かって全員一致団結」のような部活動のイメージとは、一線を画す。