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【全米プロ】松山英樹が挑む名匠ピート・ダイの最高傑作…今季メジャー2戦目、優勝候補はパパとなって戻ってきたマキロイ?
posted2021/05/19 17:01
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph by
Getty Images
松山英樹のマスターズ制覇から1カ月ちょっと。いよいよ今週、今季2つ目のメジャー大会、全米プロゴルフ選手権(5月20日~23日)が開催される。
今回の戦いの舞台はサウス・カロライナ州のキアワ・アイランド・ゴルフリゾートが誇る5コースのうちの1つで、名匠ピート・ダイが愛妻アリスとともにデザインしたオーシャンコースだ。このコースで開催された前回大会(2012年)で勝利したのは、北アイルランド出身のローリー・マキロイだった。
そして今年の全米プロでも、開幕前の優勝候補筆頭に挙げられているのは、やっぱりマキロイだ。果たして、予想通りになるのかどうか。まずは、9年前の戦いを振り返ってみよう。
9年前の圧勝劇、なぜ号泣したのか
2012年大会の最終日。72ホール目は、大観衆が固唾を飲んでマキロイのウイニングパットを見つめたというわけではなく、彼の勝利は大会記録を更新する2位に8打差の圧勝だった。
余裕綽綽の圧勝ぶりとは対照的に、勝利したマキロイは父親ゲリーに駆け寄り、その胸に顔をうずめながら幼い子どものように激しく泣いた。メジャー優勝は前年の全米オープンに続く2勝目だったが、彼はメジャー初制覇のときでさえ、あれほど激しい泣き方はしなかった。
それなのに、なぜマキロイは、キアワの18番グリーンで号泣したのか――そこに、キアワ攻略、全米プロ攻略の秘密と秘訣が隠されていた。
あの全米プロの開幕前、マキロイは「スランプだ」と言われていた。前年の全米オープン制覇と2012年3月のホンダクラシック優勝までは勢いがあった。だが、4月のマスターズは40位に終わり、6月の全米オープンは予選落ち、7月の全英オープンは60位に沈んだ。口の悪い英国のタブロイド紙は、当時、マキロイが交際していたテニス界の女王カロライン・ウォズニアッキの名前にひっかけて、「女性にうつつを抜かしてゴルフが不調になった『ローリー・ウォズロイ』」などと揶揄していた。
当然ながら、負けん気も向こうっ気も強いマキロイの胸中が穏やかだったはずはなく、怒りと焦りが渦巻き、だから余計にゴルフが乱れるという負の連鎖に陥っていた。そんな状態でキアワにやってきたマキロイの勝利を予想していた人は、決して多くはなかった。