グルージャ盛岡とのアウェイゲームを終え、帰阪。翌日から束の間のオフを利用して家族との旅行を計画していた若き指揮官のスマートフォンを鳴らした当時の強化トップはこう切り出した。

「旅行をキャンセルして、明日クラブハウスに来られるかな」

　クルピ体制の深刻さは、自身がトップチームのコーチでもあっただけに百も承知。当初は、コーチ就任の打診も想像していた宮本前監督だったが、山内隆司社長（当時）を筆頭にクラブ幹部が雁首を揃える一室に足を踏み入れた瞬間、全てを悟ったという。

　もっとも、将来的にはトップチームで指揮を執ることを目標にしていた宮本監督は、即答こそしなかったものの、当初からクルピ監督の後任には前向きだったのだ。

2018年の大阪ダービー©Masashi Hara/Getty Images

“J2に降格してもクラブをなんとかしたい”

　前監督がこだわった条件の1つが、仮にJ2リーグに降格したとしても、継続して指揮を執らせること。「リスクはあると思ったけど、クラブをなんとかしたいという思いはありましたね」というのが、当時の偽らざる心境である。

　2年連続の残留争いを生き残り、就任3シーズン目となった2020年には、川崎フロンターレにこそ力の差を見せつけられたもののJ1で2位に食い込み、天皇杯で準優勝を飾った。

　4年ぶりの出場となるACL出場権を手にしたこともあり、レアンドロ・ペレイラや韓国代表のチュ・セジョン、ウェリントン・シウバら近年、例を見ない豪華補強を施した。だが、新型コロナに複数の選手、スタッフが感染するアクシデントもあり、開幕からチームは低空飛行を強いられた。

小野社長が決断に至った瞬間とは

「リーグ戦10試合を消化し、1勝にとどまっており、中々チーム状況が改善することは難しいとの判断をし、今回の結論に至りました」

　契約解除を発表した14日当日、オンライン会見で小野社長は語ったが、同時にこうも付け加えた。

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