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「国際的失業者」と自虐していた鈴木秀樹(41)がWWEのコーチに就任! 求められる“人間風車”ビル・ロビンソンの技術とは

posted2021/05/07 17:02

 
「国際的失業者」と自虐していた鈴木秀樹(41)がWWEのコーチに就任! 求められる“人間風車”ビル・ロビンソンの技術とは<Number Web> photograph by 2021 WWE, Inc.

WWEパフォーマンスセンターのコーチに就任する鈴木秀樹 ©2021 WWE, Inc. All Rights Reserved.

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高木圭介

高木圭介Keisuke Takagi

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2021 WWE, Inc.

 世界最大手のプロレス団体・WWE(ビンス・マクマホン代表)が4月23日(現地時間)、ビル・ロビンソンの愛弟子として知られる鈴木秀樹(41)をフロリダ州オーランドにあるWWEパフォーマンスセンターのコーチ陣に迎え入れたことを発表した。

 “人間風車2世”の異名を取る鈴木は2008年に、アントニオ猪木率いるIGFでプロレスデビュー。14年からフリーとして活動し、日本国内ではざっくり説明するならば「新日本プロレス以外の団体」で活躍。日本人選手として屈指の体躯(191cm、115kg)を誇る本格ヘビー級選手にして、安定したレスリングテクニックを持つことから、ほとんどの団体で主要の看板王座を手中にしてきた実績を持つ。選手としてではなく、いきなりコーチ就任という発表にも驚かされたが、いずれ選手としてのWWE登場も噂されている。

 表向き、破天荒なストーリーラインや派手なパフォーマンスで全世界のファンを楽しませるイメージを持つWWEだが、その根幹を成すプロ・レスリング技術に関しての審美眼は非常に厳しい。その選手育成の「核」となる部分を担うのがオーランドに設置されたWWEパフォーマンスセンターだ。

 現在、パフォーマンスセンターのヘッドコーチに就任するのは14年に現役引退したマット・ブルーム氏、日本国内ではジャイアント・バーナードやAトレインのリングネームでおなじみの元名選手だ。世界のスーパースターであったショーン・マイケルズもコーチに名を連ね、ウィリアム・リーガル(ロード・スティーブン・リーガル)、フィット・フィンレー(デーブ・フィンレー)、ロビー・ブルックサイド、テリー・テイラー、スティーブ・コリノ、スコット・アームストロング、第2次UWFに来日したノーマン・スマイリー、女子プロレス部門ではサラ・アマト(サラ・デル・レイ)ら日本マットでも活躍した面々もコーチ陣に名を連ねている。

WWEが欲しがったロビンソンの直弟子

 他のコーチ陣と比べると、41歳の鈴木はかなり若い。それだけに鈴木のコーチ就任は、意外な人選にも思える。だがそれは、現在、全世界をターゲットにプロレスビジネスを推し進めるWWEが、英国発祥のCACC(キャッチ・アズ・キャッチ・キャン)をベースとしたロビンソンから鈴木に伝えられたプロレス技術を欲しているという証拠でもある。

 コーチ陣にはリーガル(イングランド出身)、フィンレー(北アイルランド出身)、ブルックサイド(イングランド出身)と、欧州系のコーチも揃っているが、あえて日本からロビンソンの直弟子である鈴木をスカウトしてきたことには意味がある。鈴木獲得に誰よりも熱心だったのは、日本通のリーガル卿だったと噂されている。WWEには全世界のプロレス興行に目を光らせ、これはと思った人材をスカウトする体制と資金力が整っている。

 ロビンソンは現役時代、日本の国際プロレスでコーチを務めていた時期(1968年11月~69年5月)もあり、72年からはバーン・ガニア率いるAWAでコーチを務め、若き日のリック・フレアーやケン・パテラ、クリス・テイラー、アイアン・シーク、グレッグ・ガニア、ジム・ブランゼルらを鍛え上げた実績がある。ここに鈴木を経由して、米国内で失われつつあったロビンソンの高い技術力が、再び米国へと逆輸入されることになった。

【次ページ】 郵便局に務めていた鈴木

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