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早藤キャディが明かす松山英樹との二人三脚…「いつ来るか分からないチャンス」を掴むため中学から言われていたこととは?
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byGetyy Imamges
posted2021/05/03 11:03
マスターズ優勝の瞬間、喜びを分かち合う松山英樹と早藤将太キャディ。コンビを組んでから初の優勝を聖地オーガスタで達成した
後続に一時は6打差をつけたマスターズの最終日。早藤もまた必死だった。
「『勝った』なんて絶対に思っちゃいけない、って自分に1000回くらい言い聞かせました」
キャディはあくまでサポート役。浮つく気持ちや動揺が選手に伝わることはあってはならない。つとめて笑顔をつくってプレーしていた松山のリズムを軽快にさせるよう力を注いだ。
愛すべき兄貴に、弟分がずっと教えられてきたことは何だろう。
「松山さんは昔から、『チャンスはいつ来るか分からない。そのチャンスが来たときに、掴めるように準備をしておけ』と言ってくれた」と早藤は振り返る。
「『試合に出られない期間が続いても、急に出番が巡ってくるかもしれない。試合に出られたら優勝できるかもしれない、人生が変わるかもしれない。だから準備が必要だ』って。人生のターニングポイントは人それぞれにあって、松山さんはそれをしっかり掴んできた。掴むための準備をずっとしてきたんだと思います」
ゴルフは、勝負事は思い通りにいかない。ただ、その現実に腐っていてばかりでは前に進めない。
「その気持ちはマスターズでも続いていたはずです。直前の試合まであれだけ調子が悪くて、ずっと練習をしていた」
年明けから成績は振るわず、オーガスタ入りの前は試合期間中にもかかわらず、毎日遅くまで、誰よりも長く練習場に居残ったことを思い出す。
「(最終日)上がり4ホールが、ボギー、ボギー、パー、ボギーって、必死なわけじゃないですか。もう技術を越えたところでプレーしていて、来たチャンスを泥臭くでもいいから、とにかく掴む。ずっとそうやってきたプロだから、勝てたと思うんです」
実は早藤はサンデーバックナインに入った頃、勝者を迎える18番でのスタンディングオベーションを想像して「ちょっと泣きそうになった」という。けれど、フィナーレではピンフラッグを握りながら、満面の笑みで兄貴と抱き合った。
グリーンジャケット姿で臨んだ記者会見で、松山は勝った瞬間の気持ちを問われて言った。
「なんて表現すればいいのかな……。ザンダー(同組のシャウフェレ)とハグをして…、将太と勝ったのは初めてだったので、やっと優勝することができたと思いました」
来たチャンスを掴んだ。ふたりの手で。その喜びは言い尽くせない。
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