青春GOLF ――石川遼に密着! BACK NUMBER
全英屈指の難コースで見えた、
今、石川遼に足りない二つのもの。
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byAFLO
posted2011/07/21 10:30
2日目はポットバンカーでリズムを崩す場面も見られた。通算5バーディ、13ボギー、3ダブルボギーを叩き、メジャーでの自己ワースト14オーバーの147位。今季メジャーで初の予選落ちとなった
「遼には遼、俺には俺の考え方がある」
用意されたソファにどっかと腰を下ろして池田勇太は言った。
昨年11月、ダンロップ・フェニックス3日目の記者会見場。前週の試合ではスイング改造に取り組み始めたばかりの石川遼が優勝していた。それを受けて、この大会でトップを走る池田にもスイングに対する質問が飛んだのだった。
「俺に決まったスイングはない。毎日違うから、調子が悪いときは悪い。そのうちよくなるからほったらかし。細かくこうしよう、ああしようとはならない。練習場の真っ平らなところで全く同じショットが打ててもコースでは同じようには打てないし、それよりもいろんな状況に対応できる打ち方を編み出すほうが大事」
コースに出ればティーグラウンド以外は多かれ少なかれ前後左右に傾斜がある。厳密にいえば、一度たりとも同じ状況はやってこないということだ。
「スイングにいいも悪いも完璧もない。ただ、人から見て綺麗か綺麗じゃないかはある」
ゴルフは規定演技とは違う。ボールのライやスタンスの場所もすべて異なるのだから自ずとスイングは毎回変わる。だから改造もへったくれもない、というのが池田の考えだった。
いいスイングが必ずしもいい結果につながらない全英の理不尽さ。
全英オープンで苦しむ石川の姿を眺めながら、その時のやり取りを思い出した。
舞台となったロイヤル・セントジョージは全英開催コースの中でも屈指の難コースだった。比較的易しいとされる昨年のセントアンドリュースでは27位に入れた石川も、今年は思い切りリンクスの洗礼を浴びた。
10回目のメジャー挑戦は通算14オーバーの147位で予選落ち。
うねるフェアウエーは落下地点によってはナイスショットをラフに弾き飛ばし、硬い地面は狙い通りのショットを予想よりはるかに前へと転がしてポットバンカーに放り込んだ。
「他の選手より手前に落ちたのに、他の選手より転がってバンカーに入ったり。自分のミスじゃないところでトラブルを招いて、こらえようと思ったけどこらえきれなくなってしまった。もう少し全英の経験が必要かなと思った」
いいスイングが必ずしもいい結果につながらない全英の理不尽さを石川は嫌というほど味わった。