猛牛のささやきBACK NUMBER
「何かやってくれそう」今年のT-岡田は勝負強い? 元ホームラン王を変えた“禅思考”とは
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKYODO
posted2021/04/24 06:00
4月22日西武戦、サヨナラ勝利を引き寄せる三塁打を放ったT-岡田。プロ16年目の頼れる兄貴がチームに活力を与えている
今年16年目、33歳のT-岡田は、後輩たちに慕われる兄貴分だ。
先週から安打が続いていた“ラオウ”こと杉本は、好調の理由を聞かれるたび、「Tさんの香水のおかげです」と答えていた。
13日のソフトバンク戦で、試合前にT-岡田のロッカーに置いてあった香水を勝手に使い、その日から安打が出るようになったため、験担ぎで毎日借りているのだという。
先輩の香水を勝手に? と聞かれた杉本は、「Tさんは大丈夫っす。優しいんで」と笑った。
T-岡田は、「それであいつの気が紛れるなら全然いいです」と、やっぱり優しい。
「打っているのはあいつの実力ですけど、そう(香水のおかげだと)言ってくれると、かわいいですよね」
「明日もヒットを打てるとは限らない」
サヨナラ勝ちした22日は、T-岡田にとっては4試合ぶりの先発出場。杉本は試合前、「いつもは僕が使わせてもらってるので、今日は僕のをつけていってください」と、T-岡田に自分の香水をかけて送り出した。
T-岡田の同点打に続き、杉本がヒットを放ちサヨナラ勝利を決めると、一塁ベースを駆け抜けた杉本に、T-岡田が誰よりも速く突進し、豪快に抱きついた。
それでも、試合後はすぐに冷静な思考を取り戻す。
「昨日と一昨日、僕はまったく試合に出ずに、チームが勝っていたので、なんとか自分もチームの勝ちのワンピースになりたいとずっと思っていた。そういう意味で、今日はワンピースになれたのかなと思います。
今日3安打打ったからといって明日もヒットを打てるとは限らない。そういう本当に繊細なものなので、とにかく1球1球、練習でも雑にならないで。どれだけ1球に食らいつけるかだと思う。今は(得点圏で)こうやって結果が出ていますけど、結果が出なくなった時にも、引きずらず、しっかり次につなげられるようにやっていきたいと思います」
優しくて、そして頼もしい兄貴分がバットで本領を発揮すれば、チームが勢いに乗らないわけがない。