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シャラポワが34歳に “引退会見もしなかった”ロシアの妖精はなぜ「孤独な強さ」を追求したのか? 

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山口奈緒美

山口奈緒美Naomi Yamaguchi

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posted2021/04/19 11:01

シャラポワが34歳に “引退会見もしなかった”ロシアの妖精はなぜ「孤独な強さ」を追求したのか?<Number Web> photograph by Getty Images

本日4月19日にシャラポワの34回目の誕生日だ

 極端な持論に感じられたが、ちょうどその頃は、10代で5つのグランドスラム・タイトルを獲得して女王に上り詰めたマルチナ・ヒンギスが20歳を過ぎてその栄光を維持できなくなっていた時期だった。また、あとにして思えば、シャラポワが語った夢を父も当然のように思い描いていたのではないだろうか。

18歳で世界女王、グランドスラム、ドーピング発覚

 テニス選手としても、また〈商品〉としても10代後半が勝負と睨んでいた父の目はある意味正しかった。17歳でウィンブルドンを初制覇し、18歳のときに短期間だが世界女王の座につき、19歳では全米オープン、20歳で全豪オープン、とグランドスラム・タイトルを重ねた。苦手のクレーコート克服には時間を要したが、25歳のときに全仏オープンを制して生涯グランドスラムを達成すると、2年後にその全仏オープンを再び制する。トータルで21週世界1位に君臨し、『フォーブス』誌の名物企画である世界のセレブの年収ランキングではウィンブルドン優勝の翌年から11年もの間、女性アスリートのトップの座を守り続けた。

 予想もしなかったほど遠くまで走り続ける中で歯車がどう狂ってしまったのか、2016年にドーピング違反が発覚。15カ月の出場停止を経てツアーに戻って来るが、コートの妖精、コートの花というイメージを取り戻すことは不可能だった。それからの3年足らずの間でツアー優勝は一度あったが、グランドスラムには9回出場してベスト8が最高で1回戦負けが4回と、かつての輝きは失われていった。

イギリス人実業家と婚約中

 今やソーシャルメディアを覗き見るくらいしかシャラポワの近況を目にすることはできないが、そこでは苦悩する姿はなく、本来のイメージを損なわないゴージャスでハッピーな日常が切り取られている。昨年の暮れ、そこに一人の男性が無邪気な笑顔のシャラポワとともに登場した。婚約が報じられたイギリス人実業家で、ロイヤルファミリーとも親交が深いというプロフィールはシャラポワの名声にもふさわしい。 

 4月19日はシャラポワの34歳の誕生日。後回しにしてきた夢の行方に関心の目が注がれる。「マリア・シャラポワ」というコンテンツはやはり今も強力だ。

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