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「人を動かす力がすごい」とOBも称賛…相良南海夫(早大ラグビー部前監督)が齋藤直人ら歴代主将に伝えた“悔い”とは? 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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posted2021/04/16 17:02

「人を動かす力がすごい」とOBも称賛…相良南海夫(早大ラグビー部前監督)が齋藤直人ら歴代主将に伝えた“悔い”とは?<Number Web> photograph by SportsPressJP/AFLO

大学日本一に輝くなど、3年間で早稲田ラグビーを立て直した相良南海夫監督。それをサポートした2人のコーチの存在が大きかったと振り返った

 監督を3年間務めたことで、改めて自分の大学時代を振り返る機会も得られたという。そこにあるのは「悔い」だ。

「大学2年の時、清宮さんがキャプテンのチームでレギュラーを取りましたが、あの年は、純粋に赤黒への憧れが強く、ひたむきに走り、タックルし続けていたんです。ところが、3年になると、FWで残ったのは僕ひとり。清宮さんの学年のレギュラー7人が抜けて、そうなると自然に自分は試合に出られると慢心してしまい、ひとつ上のプレーのレベルにチャレンジしないで終わってしまったんです。

 そして4年生になってキャプテンになると、チームのことを考える時間が多くなり、自分のプレーに集中できる時間が減っていく。ここでも選手として成長できる機会を逃してしまった。それは後悔として、はっきりありますし、息子の昌彦(現・3年生)には前監督というより、半分は親父として(笑)、話しましたけどね」

 過去3年間、佐藤真吾、齋藤直人、そして丸尾崇真の3人の主将には、「キャプテンである前に、選手として最大限のパフォーマンスを発揮して欲しい」と伝えてきたという。

 それはちょうど30年前、東伏見にグラウンドがあった時代に、キャプテンを務めた悔恨から生まれた助言である。

生涯、プレイヤー「現場で動いていたい」

 3月31日をもって監督を勇退、今は三菱重工業に戻って営業を担当する日々が始まった。リモートワークも多く、新しい時代の仕事のスタイルを模索している。

「仕事では生涯、プレイヤーでいたいですね。会社のマネージメントも大切な仕事ですし、魅力はありますが、現場で動いていたい気がします」

 新監督の大田尾竜彦からも乞われ、リクルーティング担当のアドバイザーとしてラグビー部には残る。

「引継ぎ事項は特にありませんが、大学生のクラブであることを大前提にしてプランニングを進めているのを見て安心しました。次の100年を見据えた時、価値観を継承しつつ、緊張感を持って新しいことを創造していくことに貢献できればと思っています」

 時宜にかなった監督就任だったのだろう。

 ご本人は「運が良かったです」とはいうが、運を引き寄せるのも人間の実力である。

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