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世界一、他人の妬み、4度の離婚…さらりと語るマテウス60歳 ネイマールやボルトも憧れる豪快レジェンド伝説
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2021/04/07 17:00
ベッケンバウアーと談笑するマテウス。ドイツサッカー界のレジェンドだ
「自分自身の物事の進め方に自信を持っていた。あまりにも早く有名になったことで成熟が追いつかなかったのか、大口を叩くことが多いのはそのためかもしれない。今も当時のなごりはあるが、そのあたりはよくなったと思う。言葉に責任を持っている。根は謙虚な青年でもあったんだよ」
称賛されるだけでなく妬みの対象にもなるが
有名になるということは、称賛されるだけでなく妬みの対象にもなる。
「ボリス・ベッカーもフランツ・ベッケンバウアーもそうだった。僕らだってみんなミスをする。でも、ドイツの人は有名人がミスをしたり、しでかしたりするのを喜んでいる。こうした妬み社会が好きではない」
かつて『キッカー』誌のインタビューに、ぴしゃっとそう答えていたことがある。
「すべてを手にすることなんて、できやしない。ワールドカップでもう一度優勝するためならすべてを失ってもいいかって? いや、そんなことはない。今、私は健康に暮らしている。そのことが一番大事なことだ」
自分の信念に正直でいること。バイエルンのハンシィ・フリック監督が「今でもとても若々しくて、スポーティーな君を見ていると、いい人生を送っているんだなって思うよ」と話していた。
あるいは、世間からすると少し言い過ぎ、やり過ぎという行為も、彼にとってはすべて自然体だったのかもしれない。
50歳の誕生日時に言っていたこと
50歳の誕生日に、マテウス自身が言っていた。
「誕生祝いのパーティーなんて、特に何かをしようとは思っていなかったんだ。年齢にはそこまでこだわりがないんだよ。ボトックスもいらないし、髪を染めたりもしない。僕はウェルネスのファンじゃないからね」
そんなマテウスだからこそ、打ちのめされるような体験をしても、またしっかりと立ち上がることができるのかもしれない。
長いキャリア、長い人生の間には、もちろん悪い瞬間だってある。
82年と86年のW杯は決勝で敗れ、バイエルンでは87年と99年にチャンピオンズリーグ決勝で涙をのんだ。特に99年のCL決勝はマンチェスター・ユナイテッド相手に終盤までリードしていながら、アディショナルタイムに2失点を喫しての歴史的な敗戦だったため、サッカーファンの記憶に色濃くしっかりと残っている。