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38歳大久保嘉人の衰えない得点感覚は何がすごい? 三笘薫は「見えている世界が…」【水沼貴史の“試合翌日解説”】
text by
水沼貴史Takashi Mizunuma
photograph byJ.LEAGUE
posted2021/03/04 17:10
古巣川崎フロンターレを相手に2ゴールを奪った大久保嘉人。今季はすでに3ゴールを挙げ、頭・右足・左足とシュートパターンの多彩さを見せつけている
“2点”よりもすごかったシュート
川崎戦を見て何よりも一番感じたのは、シュートテクニックのうまさ。前述したような気持ち、メンタル面はとても大切ですが、やはり技術がないと188ゴール(J1通算/3月4日現在)も取れません。
川崎GKチョン・ソンリョンのビッグセーブに遭いましたが、グラウンダー性のシュートを放ったシーンがありましたよね。この日挙げた2ゴール以上に驚きがありました。角度も完璧でしたし、あれほどの強いストレート性のシュートを打てる選手はそうそういません。
1点目のシュートも素晴らしかったですね。本人は「時間が早かったので、とりあえず枠内に打とうという感じで打った」と言ってましたが、それであんなすごいシュートが打てるんです。現在はわかりませんが、川崎所属当時の大久保は全体練習後でも残ってシュート練習を続けていたとよく耳にしていました。積み重ねた自信があるからこそ、あの場面で咄嗟に「打つ」という発想になるのです。
クロスに合わせたペナルティエリア内の動きも秀逸でした。2点目のシーンを振り返ると、最初から動かずにボールが上がるタイミングを見計らって外に逃げている。だからDFの背後のポジションが取れていた。ゴールとはならなかった右サイドのクロスを合わせたシーンでも、後ろから勢いよく飛び込んでいた。ゴールを取るための準備、ゴールを奪えそうな場所を嗅ぎ分ける力、そしてそこに侵入できる自信。それが揃うから最後はシュートだけにパワーを使える。無駄なことはせず、ゴールへ特化したプレーができていることが好調の要因なのでしょう。
188ゴールを積み重ねることができた理由
そこはやはり年齢を重ねて得た「経験」がものをいう領域です。ほとんどのストライカーが30歳を過ぎてから「駆け引き」がわかってきたと話すように、フィジカルだけで勝負できなくなってきた時に必要となるのが「敵を見る目」です。どこで待っていればいいのか、どう相手から消えるか。ゴールばかりを考えていると、自ずと視線はボールと味方に集中する。味方を見ること+敵を見る目を持つことができると、長く活躍できるストライカーとなるのではないでしょうか。現に大久保が3年連続得点王になったのは33歳の時ですからね。
まぁ、大久保の場合はまだまだ若手に負けないほどの“天性のキレ”があるわけですから、これからどのぐらいゴール数を伸ばすのか楽しみですよね。本人は「目の前の試合に集中」と口にしていましたが、今シーズンの見どころの1つです。心配なのは怪我。調子がいい時ほど怪我をしやすい。クラブのスタッフと相談しながら、しっかりと“ヨシメーター”を積み重ねていってほしいです。
西川潤ら若手にも刺激を
コミュニケーションを取るのがうまいクルピ監督が就任した影響なのか、試合前の練習ではチームの雰囲気が明るくなったような印象を受けました。セレッソには若手も多いので、大久保にはいい刺激を与える存在としても期待したいところです。特にポテンシャルが高い西川潤あたりは、日本屈指の選手とポジションを争うこの1年はターニングポイントになるのではないでしょうか? 化けなければいけない選手なので、そんな相乗効果も楽しみです。