濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
“フェリス女学院卒のプロレスラー”雪妃真矢が銀行員から“転職”した理由 「DDTを見てなかったら私は…」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byDDTプロレスリング
posted2021/02/24 11:01
(左から)安納サオリ、雪妃真矢、赤井沙希。雪妃は異色の経歴を持つ女子レスラーとして新たな闘いに挑もうとしている
もう相手を怒らせたり憎まれたりする必要はない
その翌週、2月20日のアイスリボン後楽園ホール大会では、尾崎妹加と保持するタッグ王座の防衛に成功した。挑戦者は松屋うの&チェリー。うのも「くすぶってる」選手の一人で、試合に向けた記者会見では雪妃の“口撃”を受け、自分のふがいなさに涙を見せていた。
試合の主役はうのだった。雪妃を関節技で苦しめ、ピンチの場面も粘りに粘る。自分を変えたいという思いが伝わる試合だった。そんなうのを振り切って3カウントを奪うと、雪妃はこんなコメントを残した。
「関節が壊れるかと思いましたよ。こうやってタイトルマッチで十分闘える選手なんです、うのは。こっちだって気力でやってるだけですから。いつ負けてもおかしくない。キャリアが一番近い後輩だし、今日はうのとタイトルマッチができて素直に嬉しかったです」
もう相手を怒らせたり憎まれたりする必要はなかった。メインでは取締役選手代表でもある藤本つかさがシングル王座を防衛。次の挑戦者に雪妃を指名した。
「ユキは裏で葛藤してたと思います。“プロレスでハッピー!”と叫びたかっただろうし、アメとムチのムチばかり使ってたけど、本当は後輩にアメも渡したかったはず。嫌な役回りですよね。でも、そのおかげで若手や中堅が伸びてきた。今度はそのユキと(3月の旗揚げ15)周年大会でベルトをかけて闘いたいです。“くすぶってる中堅が”と言わなくてもいいユキと」
DDT参戦での赤井とのタッグ、藤本の素晴らしく的確な挑戦者指名を経て、雪妃真矢のキャリアは新たなフェイズに入る。5年でやめるだろうと思っていたプロレス人生は、いま7年目だ。
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