濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
“フェリス女学院卒のプロレスラー”雪妃真矢が銀行員から“転職”した理由 「DDTを見てなかったら私は…」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byDDTプロレスリング
posted2021/02/24 11:01
(左から)安納サオリ、雪妃真矢、赤井沙希。雪妃は異色の経歴を持つ女子レスラーとして新たな闘いに挑もうとしている
「“どうせ見た目だけでしょ”と言われない試合を」
“華”の部分に関して言えば「それは女子プロレスの魅力でもあるので存分に見せたい」と雪妃は言った。
「今回の試合のメンバーは見られることへの意識が強い人ばかりですし。女子は飾る要素が多いのも間違いない。コスチュームにメイク、髪と。その上で“どうせ見た目だけでしょ”と言われない試合をしなくちゃいけないですね。そういうことをたくさん言われる選手生活だったので(笑)」
試合に出る4人ともに、他の選手に負けたくないという思いが強かったのだろう。せっかくの大舞台で“埋もれる”わけにはいかない。結果、出来上がったのは各々の持ち味が主張し合う闘いだ。赤井と雪妃は共通の得意技である蹴りの競演。安納は攻撃でも防御でも驚異的な柔軟性を見せる。松本は小さい体躯で正面から思い切り技を受け、トリッキーな動きで観客の目を奪いにかかった。さらに誤爆ありレフェリーの失神ありとあわただしい試合でもあった。
最後は松本が安納を裏切って仲間割れ。敗れた松本を残し、安納は赤井、雪妃とともに引き上げた。インタビュースペースでも3ショットに収まり「みなさんが見たかったのはこれでしょ」と安納。「きらびやかで華やかで強さもある、この3人でまた何かできたら」とは赤井のコメントだ。松本のやられっぷりまで含めて、4人のバランスが絶妙な試合でもあった。
「今日この試合だけに集中すればいいや」
試合を終えた雪妃に話を聞くと、第一声は「楽しかったー!」。やりたいことをやりたいようにやった試合だったようだ。
「男子団体のビッグマッチで前半戦に組まれた女子がインパクトを残すためには、とにかく主張しないとっていう。“私を見て!”って(笑)。特別な顔合わせなので、今日この試合だけに集中すればいいやって。あと腐れなくやり切りました(笑)」
このところ、アイスリボンでの雪妃はひたすら団体のために動いてきた。シングル王者だった昨年2月、団体への「反逆」を公言。他団体、フリーの選手とのユニット『レベル&エネミー』を結成する。ターゲットは「くすぶってる中堅たち」だ。おとなしく自己主張が少ない、そこそこのポジションに収まっている選手たちに火をつけたかった。
「アイスリボンはずっとトップ戦線が固定化していて。ベルトに挑戦する選手、チャンピオンになることを期待される選手が限られていたんです。そんな状況を変えるために波風を起こして団体を荒らしたかった」