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【Vリーグ女子で21戦全勝】東レ22歳主将・黒後愛が語る、“競い合うように得点を奪う”攻撃力の秘訣
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byNaoki Nishimura/AFLO SPORT
posted2021/02/20 06:00
好調の東レを牽引するキャプテンの黒後愛。石川真佑ら多彩なアタッカー陣を揃えている
怪我に苦しんだ現役時代の越谷監督
短時間集中型にしたのは、選手の怪我を防ぐためでもある。「選手層は薄いので、1人怪我しただけでもかなりの戦力ダウンになる」と言う。それに加えて、監督自身も現役時代、度重なる怪我に苦しんだ経験があるからだろう。
アウトサイドヒッターだった現役時代は、サーブレシーブが抜群に巧く、細身だがパワーがあり攻撃力にも長けたオールラウンダーで、日本代表にも選出された。東レに同期入団し、現在は東レ男子の指揮をとる篠田歩監督が、「天才」「センスの塊」と評するほどの選手で、本気で打ったスパイクやサーブの威力はすさまじかった。ただ、出力の大きさに体が耐えきれず、怪我が絶えなかった。2012年のロンドン五輪世界最終予選を最後に、32歳で現役を引退した。
同期がそれぞれ男子、女子の監督を務めていることに、篠田監督は「不思議な感覚」と笑いながら、こう話した。
「越谷は人の懐に入るのがうまいと思います。人の扱い方じゃなくて、扱われ方がうまい(笑)。バカにされても全然気にせず、一緒になってバカになれるやつなんで。それがいい方向に働いているんでしょう」
12月に味わった痛い敗戦
ただ、東レはリーグで勝ち続けた一方で、痛い敗戦も味わっている。2020-21シーズンに唯一喫した敗戦が、12月に行われた皇后杯決勝のJTマーヴェラス戦だった。
その3週間前のリーグ戦で対戦し、東レに敗れていたJTは、徹底的に対策を講じた。東レのサイド攻撃、特にそのリーグの試合で得点を量産したクラン、石川に対するブロックとディグのシフトや、マッチアップがはまり、東レの決定率を抑えた。逆に東レは、JTの主砲ドルーズ・アンドレアに対して対策が思うように機能せず、65.2%という高い決定率を挙げられ、セットカウント0ー3で敗れた。
試合後、越谷監督はこう語った。
「率直に、監督の力の差が大きいと痛感しています。あとは、しっかり対策はしてきたけれど、ドルーズ選手は勝負強かった。対応が後手後手になったところがあり、冷静さを失って、1人1人の動きが、やってきた対策とはちょっと違う動きになってしまった。JTの選手たちはこういう大事な試合でも、しっかりやってきたことを出してきた。逆にうちは、経験のなさが出たというか、若い選手も多いので、こういう大事なところでいつもより力を出せなかった」
JTは、過去3シーズン中2回リーグのファイナルに進出しており、メンバーも多くが残っている。特に2年前のファイナル3で東レに逆転負けを喫してファイナル進出を逃した悔しさを糧に、昨季リーグ優勝を果たした経験が大きい。ここ一番の戦い方を熟知している自信が、JTの選手からは伝わってきた。
JTの小幡真子主将は皇后杯決勝のあと、こう語っていた。
「会場に着いてバスを降りてから、1人1人が明確に、自分のやるべきことをしっかりできているというのは、今までの経験があったからこそなのかなと思います」
JTの芥川愛加は、「東レさんは若いチームだったので、すごく緊張しているなというのは、こちらにも伝わってきました」と話していた。