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粘りが凄い…区間賞ゼロでも往路2位の東洋大 「才能がない」4区・吉川洋次が4年間走り続けたワケ【箱根駅伝】
posted2021/01/02 21:15
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph by
Yuki Suenaga
この粘り強さこそが、東洋大の真骨頂だろう。
区間賞を獲った選手は1人もいなかったが、全員が区間ひと桁にまとめる走りで往路2位につけた。往路優勝した創価大とは2分14秒差。十分に逆転が可能なタイム差だ。
試合直後の電話インタビューで、酒井俊幸監督も逆襲への意欲を隠さなかった。
「序盤の1区、2区で良い流れができました。とくに1年生の松山(和希)が積極的な走りをして、それがうまく中盤以降につながっていったように思う。2分余りの差ですので、まだまだチャンスはあると感じています」
1区に2年生の児玉悠輔(トップと24秒差の区間9位)、2区に1年生の松山和希(区間4位)と、共に箱根デビューの新戦力が躍動。スローペースになった1区に関しては日本テレビの解説を担ったOBの相澤晃が「東洋にとっては理想的な展開」と評したとおり幸運もあったが、2区の松山は駒大の大エース・田澤廉、東海大の名取燎太を上回る走りで、しっかり東洋のリズムを作った。そして3区を走った長身の前田義弘は区間8位と粘る。そんな彼らを伸び伸びと走らせたのが、4区と5区に控える上級生の存在だった。
誰よりも結果を求めた吉川洋次
山の神候補として5区に挑んだ区間記録保持者の宮下隼人(3年)は、終盤で「右足のすねに痛みを感じ」ながらも区間3位と好走。
そして往路で唯一の4年生として4区を走った吉川洋次(4年)もまた、区間6位といういぶし銀の活躍だった。今回の箱根は取材もリモート。走り終えた選手の何人かが記者席と電話をつないだが、その中でもっとも印象深い話を聞かせてくれたのが吉川だった。
この日は走り始めから「お腹周りが苦しかった」というが、決して気持ちは切らさない。10kmと15kmの給水地点ではサポートに回った同級生たちの力水にも励まされ、最後まで力を振り絞った。
誰よりも結果を求めたのには理由がある。
吉川にとって、今回の箱根は大学生として挑む最後の大会だ。出雲駅伝はコロナ禍の影響で中止となり、全日本駅伝は夏場に疲労骨折した影響で出場すら叶わなかった。
さらに前回、3区を走り区間13位と、チームが10位に沈む一つの要因となっていただけに、期する思いがあったという。
「これまで支えてくれた方、控えに回った仲間のためにもしっかりと走りたかった」