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【記録で12球団総括】大野雄大は凄いがフル回転しすぎ? “勝利の方程式”確立の中日、2021年が勝負の年なワケ 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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posted2020/12/24 11:05

【記録で12球団総括】大野雄大は凄いがフル回転しすぎ? “勝利の方程式”確立の中日、2021年が勝負の年なワケ<Number Web> photograph by JIJI PRESS

2020年はまさにフル回転という印象だった大野雄大。ドアラも大喜びする活躍を見たいものだ

 最終的に中日は2012年の2位以来8年ぶりにAクラスの3位になった。

 成績としては素晴らしい一方で、大野がフル回転し始め、中日のエンジンがかかった9月の時点で中日は首位巨人から10ゲーム前後引き離されていた。しかも今年のセ・リーグはCSがない。優勝しなければポストシーズンはない。身もフタもない言い方をすれば2位も6位も同じだ。

 そんな中で、あたかも「優勝争い」をするかのようなフル回転ぶりには少し違和感を覚えた。もちろんプロ選手として戦っているシーズンを“手を抜け”と言っているのではない。来るべき来シーズンはどうするのか? という観点で、である。

過去に故障で戦線離脱をしているだけに

 大野雄大は最優秀防御率、最多奪三振のタイトルを取り、巨人・菅野智之との競り合いに勝って沢村賞にも輝いた。その一方で大野の2けた勝利は2015年以来5年ぶりで、2016年、2018年には左ひじ痛などの故障で戦線離脱をしている。

 果たして優勝に絡まなかった2020年に、数字としてのキャリアのピークを持ってくる必要があったのかどうか……という点である。

「キャリアハイに挑みたいというアスリートの望みに応えるのは、指揮官の義務だ」という声もあるが、後半戦の手ごたえを翌年に持ち越すために、少し体力をセーブするという手もあったのでは、とも感じる。

 大野雄大は2年連続投球回数リーグNo.1である。ただ、大野の今季の1イニング当たりの投球数は14.85と、イニングあたり15球を切る投手がめったにいない当今のNPBでは驚異的な効率の良さではあった。とはいえ来季33歳になる絶対的エースが、ここ2年と同じようなパフォーマンスができるかどうか。

大野以外の先発陣がどこまで奮起できるか

<中日の先発投手陣>
大野雄大 20試11勝6敗148.2回 率1.82
福谷浩司 14試8勝2敗92回 率2.64
柳裕也 15試6勝7敗85回 率3.60
松葉貴大 15試3勝7敗73.1回 率4.05
勝野昌慶 13試4勝5敗72回 率3.88
ロドリゲス 11試3勝4敗59回 率4.12
梅津晃大 7試2勝3敗43.1回 率3.74

 大野以外の完投は、梅津が1試合記録しているのみ。大野への依存度が大きい先発投手陣だが、来季は2番手以降が、せめて100イニングは投げるようにしないと勝機は見えないだろう。

 その一方で明るい話題は救援投手陣だ。久々に「勝利の方程式」が見えた。

【次ページ】 投手優位のナゴヤドームで打線は厳しい

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