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佐藤琢磨「僕には“いちばん最後に何が必要か”がわかっていた」~インディ500V2インタビュー~
posted2020/12/25 07:00
text by
今宮雅子Masako Imamiya
photograph by
Takuya Sugiyama
世界3大レースの中でも熱狂的な人気を誇るインディ500。100年を越える歴史においても複数回優勝者は僅かに20人。今年、栄誉あるその列に日本人が不朽の名を刻んだ。特異な年の特別な勝利は、いかに成し遂げられたのか――。
「インディ500で2勝って、本当に夢みたいに嬉しい。でもそれ以上に、僕には2012年以来のストーリーがあるから。メカニックたちが大喜びしてるシーンも最高だったし、何よりも、マイク・ラニガンに優勝リングを届けることができたのが、僕にはいちばん嬉しかったです」
8月下旬、伝統のレースで2度目の勝利を飾って以来3カ月。シリーズ戦を終えて帰国した佐藤琢磨は、休むことなく毎日のスケジュールに臨んでいる。ホンダをはじめ、多くの協力企業への報告、ファンイベント、取材対応、そして夢を追いかける子供たちへのサポート。そんな慌ただしさのなかでも、8月の熱い思いは鮮明なままだ。
8年前のインディ500、最終ラップのターン1で首位ダリオ・フランキッティに挑んだ琢磨は、巧みなディフェンスに敗北し、クラッシュしてレースを終えた。
「あのレースの後にはみんな『挑戦したことを誇りに思うよ』って言ってくれたけど、僕が勝てなかったことは事実で。彼らは口にしなかったけど、その無念さたるや凄まじいものだと、僕は知っていました」
“彼ら”とは、レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング(RLLR)。'86年のウィナー、ボビー・レイホール率いるチームで'12年シーズンを戦った琢磨は、'17年アンドレッティ・オートスポーツでインディ500初勝利を挙げ、'18年にはRLLRに復帰した。