端っこで写っていた集合写真

　坂本さんは、懐かしげに話した。

「部活中のランニングで、いつも会う人がいてね。ダックスフントを2匹連れていて。雪が積もると、片方の犬は足が悪いのか抱かれたままなんだけど、もう一方は雪の中を思い切り走り回ってて、抱かれてる方もワンワンうれしそうに鳴いていた。それを見て、いつも塁に言ってたんだ。『一生懸命やるとな、みんなが楽しくなんねん。自分だけじゃねえんだぞ』ってね」

　坂本さんは別のインタビューで、バスケを始めたころの八村を「いつもフードをかぶって、目立たないようにしているような子だった」と表現していた。野球チームや小学校の集合写真でも、端の方に写っていることが多かったはずだと述懐した。

　初心者からチームの大黒柱へと成長し、全国準優勝という成績を挙げた後に撮影された、部の集合写真。坂本さんはそれに目をやり、首をかしげる。

中学時代、全国準優勝のあとの集合写真。八村は最前列で笑みを浮かべる　©Futoshi Mikami

「誰かが追いやってるわけじゃないのに、いつもここにいるんだよなあ……」

　中学でのバスケを通して、全力で物事に取り組み、自らの限界を少しずつ広げていく喜びを知った八村は、最前列の真ん中で、堂々と笑っていた。