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秋のマスターズ、“無表情の男”が溢れる涙で「しゃべれない…」世界1位ダスティン・ジョンソン初制覇 

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舩越園子

舩越園子Sonoko Funakoshi

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posted2020/11/16 17:01

秋のマスターズ、“無表情の男”が溢れる涙で「しゃべれない…」世界1位ダスティン・ジョンソン初制覇<Number Web> photograph by Getty Images

異例尽くしのマスターズを制した36歳ダスティン・ジョンソン。日本から出場した松山英樹は通算8アンダーの13位タイ、今平周吾は通算イーブンパーの44位タイに終わった

DJに手厳しかった米メディア

 史上初の「秋開催」「無観客」という特殊な状況に加え、前年覇者のタイガー・ウッズの2連覇なるか、あるいは肉体を巨大化して400ヤード超をかっ飛ばそうとしていたブライソン・デシャンボーがパワーでオーガスタを凌駕できるかどうかが取り沙汰された今年のマスターズは開幕前から騒がしかった。

 そんな巷の喧騒を意識さえしていないという様子で、ジョンソンはいつものように淡々とプレーを続け、3日目を終えたときには2位に4打差を付けて単独首位に立った。

 しかし、彼に対する米メディアの論調は厳しく、「ジョンソンの54ホール・リーダーは優勝へのポール・ポジションではない」などと書き立てていた。

 というのも、ジョンソンはこれまでメジャー大会の最終日を4度も首位で迎えながら、そのリードを勝利へ結びつけたことは1度も無く、「だから今回も敗北するのでは?」と見る向きがあったのだ。

10年全米オープンで大崩れ「DJチキン」

「4度」の始まりは10年も前だった。

 2007年にプロ転向し、翌年から米ツアーで戦い始めたジョンソンは、2010年の全米オープンで初めてメジャー大会の最終日を単独首位で迎えたが、みるみる大崩れして82を叩き、「DJはチキン(小心者)」と揶揄された。

 54ホール・リーダーに立ちながら勝利を逃がした4度目は今年8月の全米プロだった。百戦錬磨のロングヒッターであるジョンソンが、ショートヒッターのコリン・モリカワに逆転勝利されたことは、ゴルフファンの記憶に新しい。

悔し涙も嬉し涙もなかったから

 しかし、どんなときもジョンソンが悔し涙を見せることはなく、それどころか彼は2016年の全米オープンでメジャー初制覇を果たしたときでさえ、感極まる姿を見せなかった。

 もっとも、あの優勝は、ジョンソンのボールがグリーン上で動いたかどうか、罰打が科されるかどうかの判断が大会を主催するUSGAによって保留されたまま優勝争いを続けるという前代未聞のルール上の珍事に巻き込まれた末の勝利だったため、うれし涙が溢れ出す状況ではなかった。彼は感涙も見せなければ、USGAへの文句や批判も口にせず、淡々としていた。世界ランキング1位に輝いたときも、少なくとも公けの場に彼の涙は無かった。

 そんなジョンソンがマスターズを初制覇し、テレビカメラの前でうれし泣きした姿に釘付けになったファンは多かったのではないだろうか。

【次ページ】 マスターズへの特別な思い入れとは?

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