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アロザレーナと“動物電気”の強烈さ。映画化も決まった「レイズの大型新人」を知っているか? 

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芝山幹郎

芝山幹郎Mikio Shibayama

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posted2020/11/07 11:01

アロザレーナと“動物電気”の強烈さ。映画化も決まった「レイズの大型新人」を知っているか?<Number Web> photograph by Getty Images

10月27日のワールドシリーズ第6戦で初回にHRを放ったランディ・アロザレーナ。チームは敗れワールドチャンピオンの座は逃したが、プレーオフ記録を更新する10本目の本塁打となった

 ところがポストシーズンのアロザレーナは、怪物的な活躍を見せた。すでに周知の事実だが、ポストシーズン全20試合に出場した彼は、77打数29安打、10本塁打14打点、総塁打数64という破天荒な数字を残した。

 ポストシーズンの単年記録としては、安打数(これまでは14年のパブロ・サンドバル=26本)、本塁打数(これまでは02年のバリー・ボンズ、04年のカルロス・ベルトラン、11年のネルソン・クルーズが各8本)、総塁打数(これまでは11年のデヴィッド・フリース=50)が、すべて史上最多である。

記録にも記憶にも残る“一撃”が多い

 数字も凄いが、本塁打も記憶に残る一撃が多い。ヤンキースを相手にまわしたALDS第1戦1回裏には、あのゲリット・コールの高めに浮いた球を見逃さず、センター越えに運んだ。

 ワールドシリーズ第3戦9回裏には、ドジャースの抑え投手ケンリー・ジャンセンから火を噴くような打球を左翼席に叩き込んだ。掲示された打球の初速は111.3マイル。眼にも止まらぬ速さで、打球は客席に飛び込んでいった。

 二転三転の末、レイズが8対7で劇的なサヨナラ勝ちを手にしたワールドシリーズ第4戦(きれいに転んで1回転したあと、敵失に乗じて、スラップスティックのように逆転ホームインしたのもアロザレーナだった)の4回裏、フリオ・ウリアスから右中間に放った本塁打も記憶に残る。この一発で、史上最多の本塁打記録が更新されたのだが、アロザレーナ(右打者)で感心するのは、反対方向の打球が非常によく伸びることだ。

 総数10本の本塁打の内訳を見ると、左翼が3本、右翼が2本、中堅(右寄り)が3本、右中間が2本となっている。つまり、全10本のうち7本までが、反対方向(センターよりも右側)に飛んでいる。全盛期のアルバート・プーホルズを思わせる打球の飛び方だ。そういえば、ワールドシリーズ最終戦の1回表、トニー・ゴンソリンのスライダーを巧みにおっつけて右翼席へ運んだ一打も技ありだった。これがポストシーズン第10号。

 私は、アロザレーナがシリーズのMVPを受賞するのではないかとひそかに期待していた。ただ、シリーズの負けチームからMVPが選ばれたのは、1960年のボビー・リチャードソン二塁手(ヤンキース)が、いまのところ最初で最後だ。

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ランディ・アロザレーナ
タンパベイ・レイズ

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