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アロザレーナと“動物電気”の強烈さ。映画化も決まった「レイズの大型新人」を知っているか?
posted2020/11/07 11:01
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph by
Getty Images
これは劇画か。ニュータイプの野球アクション映画か。
ランディ・アロザレーナのバットが一閃し、ボールがピンポン玉のように弾き返されていくのを見るたび、私は笑い出しそうになりながら眼をみはっていた。
陳腐な比喩をもうひとつ重ねる。
アロザレーナは、ほとんど彗星のごとく現れた。レイズが将来の先発投手候補マシュー・リベラトーレを放出してまで獲得した期待株ということは耳にしたものの、これほど急速に化けるとは思っていなかった。凄いな、映画にしたいくらいだな。
そう思っていた矢先、その半生を映画化するというニュースが飛び込んできた。〈ハリウッド・リポーター〉電子版によると、来年後半撮影開始の予定で、すでに脚本執筆が進んでいるという。『ソウル・サーファー』(2011)の原案を書いたメンバーのひとりブラッド・ギャンの脚本で、監督や主演俳優は未定だが、スリリングな物語になることは、まずまちがいない。
命がけの亡命からMLBへ
実際の話、アロザレーナ(1995年キューバ生まれ)の半生は、少年時代から波瀾万丈だった。2014年に父親を亡くし、翌15年、木の葉のようなボートでキューバからメキシコに亡命(文字どおり、命がけだったそうだ)。16年にはカーディナルスと契約し、19年にメジャー昇格(19試合で20打数6安打)。先ほども触れたとおり、20年1月にはトレードでレイズに移り、今季は23試合に出場して64打数18安打、7本塁打の成績を残した。
7月下旬の開幕前、アロザレーナは新型コロナウイルスに感染して隔離生活を強いられた。隔離期間中は、1日300回の腕立て伏せをこなしていたそうだが、試合に出はじめたのは8月30日からだ。そして、前述の成績。これだけなら、前途有望な若手、という常套句の範囲を出ないかもしれない。