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石川直宏が語る国立決勝で勝つための法則 04年、戸田光洋への伝言と原博実の「ドトールおごるから」
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph byToshiya Kondo
posted2020/11/02 17:00
2004年ナビスコカップ、PK戦の末、FC東京が初タイトルを獲得。歓喜の瞬間、GK土肥洋一の元へ駆け寄った
カップ戦決勝に強いFC東京
FC東京は、カップ戦の決勝に強い。2004年に続き、2009年のナビスコカップも制覇。2012年元日の天皇杯決勝でも、京都サンガを破った。国立競技場での決勝で勝つためのキーワードとして、石川が挙げるのが「一体感」だ。
「04年の決勝も、自分ひとりの力では絶対に走り切れなかったし、守り切れなかった。ジャーンが退場になったことで、交代せざるを得なかったフミさん(三浦文丈)の悔しそうな顔や、代わりに入ったフジさん(藤山竜仁)が懸命に体を張る姿を見て、俺もやらなきゃって感じたんです。一人ひとりがそう思うことで、どれだけピンチを迎えても、最後の最後で体を寄せられた。
GKも、ベンチにいた塩田(仁史)は悔しかったはずです。準決勝まで試合に出ていたのに、決勝は日本代表から戻った土肥さんがゴールマウスに立った。それでも、試合が終わった瞬間、塩田だけでなく控えGKみんなが土肥さんのところに駆け寄って、みんな笑顔で写真撮影する。当たり前のことなんですけど、どれだけみんながチーム全体のことを考えて、一体感を持って戦えるか。これが決勝の一発勝負で勝つには重要だと思いますね」
09年優勝、スタンドにいた安部柊斗
2020年11月7日、再びFC東京は、国立競技場でのルヴァンカップ決勝の舞台に立つ。クラブコミュニケーターの立場になった石川は、後輩たちが「あの光景」を眺めることを、心待ちにしている。
「僕は93年に初めてJリーグを観戦したのも国立競技場ですし、プロデビューも、初タイトルも国立だった。僕にとっては、パワースポットです。決勝で勝って、表彰式のときに見る国立競技場って、最高なんですよ。赤く色づいた陽射しがスタンドのファン・サポーターを照らして、少し冷たくなった風が芝生の匂いを運んでくる。五感をフルに使って優勝の喜びを味わえるんですよね。優勝した直後に、またこの場所に立ちたいと思える。
04年のときは、下部組織にいた吉本(一謙)が僕らの優勝する姿をスタンドから見て、後にトップチームの主力に成長した。2009年の優勝のときは、(安部)柊斗が見ていた。今の選手たちにも、スタンドやテレビの前の子どもたちが、『俺もあの場所に立ちたい』と思うようなプレーをしてほしい。そのためにも、とにかく自分が持っている力を出し切ってほしいですね。そうすれば、きっと優勝という結果がついてくる。長谷川健太監督は、“足がつるまで走れ”と言う人だから、大丈夫。もし16年前の僕みたいに足がつったとしても、どの選手も必ず走り切ってくれるはずです」
石川のスコア予想は、2-1でFC東京勝利。もしこの予想が的中すれば、きっと選手たちにドトールコーヒーをおごってくれる。