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井上尚弥はマロニーをどう崩す? ラスベガスで「夢のファイトマネー」と4団体統一の道へ
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2020/10/31 11:01
約1年ぶりの試合に臨む井上尚弥。聖地ラスベガスで“モンスター”級の強さを見せつけられるか
マロニーの2度目の世界挑戦
井上は今週末のファイトを「デビューして8年、あと8年やると考えれば今回の試合はボクシング人生の折り返し地点」と位置づけた上で、「区切りの第2章。その出発がラスベガス。そこは気合いを入れます」と決意のほどを口にした。
その第2章のトップバッターに抜擢されたのがジェイソン・マロニー(オーストラリア)だ。当初4月にセットされたWBO王者ジョンリール・カシメロ(フィリピン)との3団体統一戦はコロナ禍により延期された。ラスベガスで待ち続けたカシメロがしびれを切らすように路線を変更したことで、急きょ浮上したのがマロニーだった。
前WBAスーパー・フライ級王者、アンドリューを弟に持つ双子ボクサーのマロニーはこれが2度目の世界挑戦。前回は18年10月、井上が優勝したトーナメント戦、WBSSの初戦でIBF王者のエマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)に接戦の末、スプリットデシジョンで敗れた。そのロドリゲスは続くWBSS準決勝で井上に2回TKO負けしている。
井上がいかにしてマロニーを崩すか
三段論法が通じないのがボクシングの鉄則とはいえ、スピードやパワー、テクニックといった戦力面を比べても、大舞台や厳しい試合という経験値を比べても、井上の優位は動かない。試合の見どころは井上がいかにしてマロニーを崩していくかに尽きるだろう。
22戦21勝(18KO)1敗の戦績を誇るマロニーは非常にオーソドックスなボクシングをする選手だ。ガードを高く掲げ、ジャブ、ワンツー、ボディ打ちで相手を崩していく。中南米選手のようないやらしさや独特なリズムを持ち合わせているわけではないが、ディフェンスが固く、スタミナとガッツがあって、ロドリゲス戦ではハートの強さも見せつけた。
6月にラスベガスで行った試合の解説を務めたESPNのコメンテーター、元世界王者のティモシー・ブラッドリー氏は「インサイドの攻防でフィジカルが強い」とマロニーを評した。本人もそこには自信を持っているようで、井上に圧力をかけられても耐えられると考えている。となれば井上が思わぬ苦戦――というケースもあるのだろうか……。