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遠藤航は「最も重要な選手」と指揮官 香川真司を発掘したSDとシュツットガルト再建へ
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2020/10/17 17:01
日本代表コートジボワール戦でも効いていたプレーをブンデスの舞台でも見せたいところだ
香川を発掘した男が昨季からSDに就任
当時のボルフガング・ディートリッヒ会長は「バイエルンとドルトムントに次ぐクラブにする」と宣言……。
「現実はそうではない。バイエルンはリーグ8連覇中。ドルトムントとライプツィヒは、普通にやればトップ4に入ってくる。さらに4位から6位の座を争うクラブが幾つかある。15、16位にいるのが我々だ。夢を見るのはいい。でも大きくしすぎてしまったらだめだ。我々の目標は1部残留。長期的にリーグで戦っていけるチームを構築することだ」
シュツットガルトの現状を冷静に分析するのは、昨年からSD(スポーツディレクター)を務めるスベン・ミスリンタートだ。
ドルトムント、そしてアーセナルでスカウティングチーフとしてクラブの躍進を支えた。香川真司を発掘したのも彼である。数多くの逸材を見つけ出してきた正しき眼を持つ男は今、シュツットガルトを根本から築き直すプロジェクトの中心に立っている。
身の丈に合った経営方針で、身の丈に合った戦力補強で、身の丈に合った目標を定めて戦い抜く。
名前で選手を獲得しない。若く将来性があり、シュツットガルトのために戦える選手を発掘する。
キミッヒもユースにいたのに……
そもそもシュツットガルトは、昔から育成年代の代表選手がドイツで一番多いクラブと見られてきた。しかし、それだけの逸材を抱えながら彼らがトップチームで活躍できないことがネックとされていた。
代表的な例を挙げると、ドイツ代表GKのレノだろう。シュツットガルトでは出場機会に恵まれずレバークーゼンへ移籍。すると正GKとなって活躍し、ドイツ代表では常連となり、現在はプレミアリーグのアーセナルで守護神を務めている。
ドイツ代表MFヨシュア・キミッヒもその1人だろう。シュツットガルトのユース後に2部リーグ時代のRBライプツィヒで経験を積み、シュツットガルトには戻らずバイエルンへと移籍。すると初年度にグアルディオラ監督に見いだされて、今ではバイエルンに止まらずドイツ代表でも主軸となっている。
どうすれば有能な若手を手放さず、育てることができるのか。
“メイド・イン・シュツットガルト”の選手を重用し、クラブのアイデンティティをより一層確固たるものにするためにできることは何か。