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【秋華賞】デアリングタクト、史上初の無敗三冠牝馬へ 「将来はアーモンドアイのように」桜花賞の裏側
text by
江面弘也Koya Ezura
photograph byHochi/AFLO
posted2020/10/15 17:00
桜花賞の上がり3F36.6はメンバー中最速。4角12番手から一気に差し切った
「普段はおとなしいんですが、レースになると闘争心が」
'81年うまれの杉山はまだ38歳。厩舎を構えて5年めの若手調教師だ。馬の状態を優先し、しっかりと自分の考えを伝えてくる姿勢に岡田も信頼をおいている。
懸念していた賞金不足の問題もなく、デアリングタクトは桜花賞に勝った。しかも、先行した2頭が粘る流れのなかで、ただ1頭うしろから追い込んでくる、圧倒的な瞬発力を見せて。杉山は言う。
「正直、4コーナーではきびしいかなと思いましたけど、この馬は、加速してトップスピードになると、ピッチが上がるんです。それで、根性もある。普段はおとなしいんですが、レースになると闘争心が溢れるようになってきた。そういう、オンとオフがはっきりしている馬なんです」
将来はアーモンドアイのような馬に
そして次は、岡田が目標に掲げていたオークスである。無敗で牝馬二冠を達成すれば'57年のミスオンワード以来、じつに63年ぶりの大記録となる。
桜花賞2着レシステンシア(父ダイワメジャー)は距離適性を考えてNHKマイルCに向かった。3着のスマイルカナ(父ディープインパクト)、忘れな草賞のウインマイティー(父ゴールドシップ)、そしてフローラSに勝ったウインマリリン(父スクリーンヒーロー)の3頭は岡田繁幸の関係馬だ。岡田兄弟対決の様相を呈してきたが、桜花賞4着のクラヴァシュドール(父ハーツクライ)や5着ミヤマザクラ(父ディープインパクト)も距離が延びての巻き返しを狙っている。それでも、長い東京の直線ではデアリングタクトの瞬発力がさらに威力を増すはずだ。
岡田は最後にこう語った。
「一戦一戦過剰な期待をかけて、自分が思った以上の走りをしてくれている。将来はアーモンドアイのような馬になってほしい」
残念ながら競馬場では観戦できないが、5月24日の東京でデアリングタクトは歴史に残る走りを見せるだろう。
Number1002号(2020年5月7日発売)「デアリングタクト『豪脚プリンセス、さらなる快挙へ』」より