炎の一筆入魂BACK NUMBER
“黒田・新井と若手のつなぎ役” なぜ41歳石原慶幸はカープの19年間「誰かの支え」であり続けたのか
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byKyodo News
posted2020/10/13 12:40
2018年は38歳8カ月の史上最年長で通算1000安打を達成した石原慶幸捕手。広島東洋カープ一筋の現役生活だった
「試合に出ていないときに声をかけるのは簡単。でも黒田さん、新井さんがあれだけチームを引っ張っていけたのは、高いレベルで主戦として試合に出て、行動で示していたから。言うだけは簡単。言うことと、やっていることが伴っているから偉大だった」
最後まで2人の大きな背中を追い続けていたのかも知れない。本人に葛藤はあっても、チームメートからは必要とされた。同調するだけでなく、諭すこともあった。聞くだけではなく、時には動いた。言葉からではなく、行動や表情から読み取った。扇の要として、投手だけでなく他の野手の表情も見えるポジションにいたからか、石原にはチームメートのことがよく見えていた。
高卒新人を“鉄板ネタ”で応援する石原慶幸
一軍の最前線より二軍の若い選手と過ごす方が長いリハビリ中も、石原は石原であり続けた。
20歳以上歳が離れた高卒新人の玉村昇悟には往年のギャグを伝授。練習場に併設された寮の食堂から出てきた左腕に「がんばれ」と声をかけたと思ったら、「お前も頑張れよ」とジミー大西の鉄板ネタを返したのだ。こわばった表情に、40歳は深いしわを刻んでニヤリと笑った。
低迷期や3連覇したときと変わらず、最後まで「誰かの支え」であり続けた。広島一筋19年、石原は生涯女房役を勤め上げ、プロ野球人生に幕を下ろす。
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